2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

今年も山猫忌 8

高橋悠治さんと柳生弦一郎さんによる「ハハハのがくたい」を読んでいると、作品と いうのはどのように読んでもいいということがわかります。これは長谷川四郎さんの 作品であるから、特別にそうであるのかもしれません。この作品は、このように読んで もらい…

今年も山猫忌 7

高橋悠治さんと柳生弦一郎さんによる絵本「ハハハのがくたい」を手にして、読んで いましたら、当然のことのように、そのもとになった「アラフラの女王」を読んでみた くなるものです。 「アラフラの女王」というのは、「時価三百万ドル、稀代の宝物」でハハ…

今年も山猫忌 6

昨日に柳生さんの絵に添えられた高橋悠治さんの文章を引用しましたが、引用後半 の部分は、長谷川四郎さんの作中にある「詩」です。 昨日の絵に対応する四郎さんの「アラフラの女王」文章は、次のようになっています。 「ところかわれば、しなかわる、なんて…

今年も山猫忌 5

絵本「ハハハのがくたい」に寄せた高橋悠治さんの文章の続きです。 「柳生弦一郎さんが長谷川四郎さんの愛読者とはしらなかった。おもいがけないとこ ろに読者をもっていたのも、長谷川さんらしい。うれるような本をかく人ではなくて、 どこか本屋の片すみで…

今年も山猫忌 4

絵本「ハハハのがくたい」に寄せられた高橋悠治さんの文章を、昨日に続いて引用 です。 「長谷川さんという人は、『アラフラの女王』にでてくる、もと舟乗りのおじいさん のように、でっかいだんぶくろのようなポケットから話をたくさんとりだしては、 ひと…

今年も山猫忌 3

高橋悠治さんによる「ハハハのがくたい」は、長谷川四郎さんの「アラフラの女王」 よりとありますが、著名な音楽家 高橋さんが四郎さんの書いた作品を読み込んでから 自由にアレンジして、別な作品に仕上げたという趣であります。 福音館書店の「こどものと…

今年も山猫忌 2

長谷川四郎さんは、年を重ねるに従って前衛的になってきまして、当方はどちらか というと前衛的なものは弱くて、晩年の作品は不得意であります。 晩年には自伝的な内容の小生がありまして、こちらは大好きなのですが、これは四郎 さんの目指す方向ではないで…

今年も山猫忌

今年も「山猫忌」です。ピーチな旅で留守にしてたせいもありまして、話題にする のが遅れてしまいましたが、4月19日は作家、詩人で「ぼくの伯父さん」長谷川四郎 さんの命日で、この日のことを拙ブログでは「山猫忌」といっています。 昨年からの一年に長谷…

4月 ピーチな旅3

いつからか桜といえば、ソメイヨシノが代表のようになっていますが、これは 江戸末期から明治期に作り出された品種でありますので、世にでてまだ百数十年で あります。 江戸中期までに桜といえば、もっと素朴であったのでしょう。昨日に見物にいった 造幣局…

4月 ピーチな旅2

本日は雨が心配されたのですが、よい方向でお天気がむかって朝から気持ちの良い 晴れの日となりました。今回のピーチな旅の、本日がメーンイベントでありました ので、このお天気はありがたしです。神の加護でありましょうか。 10時くらいからスタートした…

4月 ピーチな旅

週末を利用して大阪へと来ています。仕事場から、そのまま空港へと直行して最終 の関空便を利用しますと、21時過ぎには大阪市内に入ることができます。 地元にいますと月遅れで放送されている「探偵ナイトスクープ」も、放送日に見る ことができました。最近…

セ・パ さよならプロ野球16

今年のシーズンもロッテは開幕から順調なスタートで、今現在ではパリーグの首位を 走っているようです。そのむかしであれば、五月の連休が終わった頃から失速して、 シーズンが終わってみたら指定席のようなところに沈んでいたのですが、最近は昔の 面影はな…

セ・パ さよならプロ野球15

「さよならプロ野球」というのは、昨日に紹介した審判員の山崎さんにとっては、プロ 野球の世界から引退することでありますし、小説の主人公である敏男さんにとっては、 仕事のかわりのつとめとしていたロッテを中心とする野球のスクラップつくりをやめる 決…

セ・パ さよならプロ野球14

今から30年ほども昔の小説でありますから、作中に登場するロッテの選手のほとんど は現役を退いているようです。 主人公の敏男が心配して見守った打撃投手の佐藤文彦さんはどうしているのでありま しょうか。 作中の登場する野球関係者で、この人は30年たっ…

セ・パ さよならプロ野球13

吉川良さんの小説「セ・パ さよならプロ野球」の縦糸は「佐藤文彦」という実在の 「打撃投手」に光をあてることで、「発見の喜び」を描いたと、この作品を評した川本 三郎さんはいっています。川本三郎さんの評は、「新日本文学」84年5月号にあるもの です。…

セ・パ さよならプロ野球12

「セ・パ さよならプロ野球」の縦糸は、主人公が一年間働かずに、パ・リーグの 野球記事のスクラップをすることでありました。ロッテ球団の新聞記事だけでは、 なかなかスクラップブックが埋まっていかないので、パリーグまで対象の範囲を拡げ て、夏の期間…

セ・パ さよならプロ野球11

昨日に掲載した川崎球場のスタンド風景は、87年10月8日のものでありました。 ちょうど小説「セ・パさよならプロ野球」の舞台となるシーズンから4年後にあたりま す。なんといってもロッテというチームは話題となることが少なかったので、この小説 が連載中は…

セ・パ さよならプロ野球10

昨日に引用しましたが、吉川良さんの小説の作中人物は「日本の国は、巨人が勝って いた方がいいんですよ。いろんな職場で仕事が気分がよくはかどる。それが世の中の あり方ですよ。」と発言しています。日本の高度成長期と巨人の黄金時代は重なるせい もあっ…

セ・パ さよならプロ野球9

「セ・パさよならプロ野球」は「新日本文学」に一年間連載されたのですが、描かれ たのは、主人公 敏男さんの無職でヒモまがいの一年の生活と、ロッテを中心とする パリーグ野球の一年であります。 昨日はシーズンに入る前に、パリーグの監督が本拠地周辺の…

セ・パ さよならプロ野球8

主人公の敏男さんは、ある日の午後に埠頭行きのバスに乗って市の中心部から工場 地帯に入って行きます。川崎の工場地帯でありますから、小さな町工場ではなく、日本 を代表する企業の工場群です。 「敏男は朝の満員のバスを思いだし、通常ならそれらの建物の…

セ・パ さよならプロ野球7

できれば働かずにおまんまにありつくことができればいいとは思いますが、そんなに うまい話は、ほとんどないことであります。吉川良さんの小説「セ・パ さよならプロ 野球」の主人公 敏男さんは、二十五年間勤めていた小さな会社が、吸収合併されたの を機に…

セ・パ さよならプロ野球6

東京都と横浜の挟み撃ちにあって、川崎市というのは苦戦をしていますよね。 東京にしても横浜にしても、邪魔なものは隣の庭にぽいっと棄てているような ところがありまして、それの受け皿になっていたというのが川崎の昔のイメージで しょうか。川崎に本拠地…

セ・パ さよならプロ野球5

ドイツ文学者で、文芸批評家の川村二郎さんは、「2008年2月7日朝、自宅居間で本 を読んだままの状態で発見されたという。長女(56)は『夜通し本を読む習慣だった。 急だったが、父らしい死だったのではないか』と話した。 ちょっととっつきにくいが、いった…

セ・パ さよならプロ野球4

川崎球場が完成したのは1951年とありますので、当方が生まれたのと同じ年でありま す。人間であればなんとか60歳近くまで現役でいることができるというのに、野球場は 早々に古くて使えないといわれるのでありました。 川崎球場は、ロッテ球団が千葉に本拠地…

セ・パ さよならプロ野球3

「さらば宝石」のEこと榎本喜八さん(沢木耕太郎さんの文章の最後の行で、この名前が あきらかになります。)は、大毎オリオンズの選手でありました。いまでは大毎という 言葉を聞くことはありませんが、これは大阪毎日の略であるのかと思っておりましたら、…

セ・パ さよならプロ野球2

野球話題が続きます。当方が「敗れざる者」と聞いた時、一番に思い浮かぶのは、 沢木耕太郎さんが「さらば、宝石」という文章で取り上げたプロ野球選手のことで あります。 この文中ではEというイニシャルになっていましたが、これは先月14日に75歳で なくな…

セ・パ さよならプロ野球

いまから20年くらい前のことですが、「セ・パ」と聞いて何を思い出すという と、30代男性のほとんどは、それってプロ野球と答えたと思います。最近であれば、 それは韓流のなにかといわれそうです。 日本のプロ野球が、国民に圧倒的な人気を獲得していたのは…

女性の編集者 5

純文学分野の小説などを積極的にだしている大手出版社に、女性の文芸編集者はいた のかというのが謎であります。編集部に女性がいなかったとは思えないのですが、 アシスタントではなく、担当の作家を持つようになったのは何時頃からなのでしょうね。 河出書…

女性の編集者 4

「女性の編集者」といっても、「栄養と料理」とか「暮しの手帖」ではなく、文芸誌の話 であります。先日の朝日新聞読書欄には岸朝子さんが紹介されていましたが、この方は 30代になってから雑誌記者となり、その後「栄養と料理」に転じて、編集長を務め、 79…

女性の編集者 3

その昔に、文芸編集者というと圧倒的に男性社会であったのでしょう。文芸の主流 は小説でありますし、男性の小説家にはとんでもない女性観の人がいたようでありま すので、女性の編集者というのは、本当にたいへんであったと思われます。 同性だからといって…