今年も山猫忌 3

 高橋悠治さんによる「ハハハのがくたい」は、長谷川四郎さんの「アラフラの女王」
よりとありますが、著名な音楽家 高橋さんが四郎さんの書いた作品を読み込んでから
自由にアレンジして、別な作品に仕上げたという趣であります。
 福音館書店の「こどものとも」には、「絵本のたのしみ」という8ぺーじの付録が
挟み込まれていますが、これには津野海太郎さんが「原始人・長谷川四郎」という文章
を寄せ、高橋悠治さんは「三人でつくった絵本」という文章を寄せています。
 ここでは、高橋さんの文章から引用してみることにします。
「『ハハハのがくたい』の原作は『アラフラの女王』という。長谷川四郎さんが1975年
に『のびのび』という雑誌に連載した童話だった。もと舟乗りのおじいさんのわかい
ときの話ということになっている。連載している間に次から次へとおもいついたことを
かきこんでいった感じで、話はおもいがけないところにころがっていく。波にゆられて
ただよってきたものがぶつかりあってできたような話全体を通じて、板子一枚へだてた
波のリズムがきこえるようだ。あっちへごろごろ、こっちへごろごろ、つじつまをあわ
せようともせず、はこばれていく。」
 これは高橋悠治さんによる書き出しの部分であります。単行本で40ページほどの小説
ですが、「あっちへごろごろ、こっちへごろごろ、つじつまをあわせようどもせず」
でありますから、筋はあってなきがごとくです。筋を追っていますと、ほとんど道に
迷ってしまいます。