2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧

小沢信男著作 230 通り過ぎた人々

現在も入手可能な本については、あっさりと駆け足でと思っていますが、手にとって 中をのぞいて見ますと、ほとんどおぼえていなかったり、読めていなかったりするもの ですから、ついついと長居をすることになってしまいます。 本日から話題にするのは、みす…

小沢信男著作 229

小沢信男さんが稲垣足穂さんを描いた「超俗の怪物」の読んでいて、日本自動車学校 での足穂と小沢さんの御父上の足跡と、その後を見ていましたら、小沢さんの小説 「ひとのせぬこと」(初出「社会新報」1969年1月8日 「若きマチュウの悩み」収録) を思い出…

小沢信男著作 228

「自動車学校の生徒には、道楽息子たちと、高収入期待の貧乏人たちの二階級があった」 のでありますよ。この自動車学校というのは、1920年ころの話ですから、当方の父が 生まれたころの話です。当方の父は、結局自動車運転に縁がなかったのですが、当方の 小…

小沢信男著作 227

小沢さんが「稲垣足穂」に近しいものを感じる、もうひとつの理由は、小沢さんの 御父上つながり(?)であります。 当方は、小沢さんの著作のなかに、小沢さんが顔をだすところが好きでありまして、 この「稲垣足穂」に関わる文章のなかでも、そこに注目して…

小沢信男著作 226

小沢信男さんの「超俗の怪物 稲垣足穂」は、単行本「悲願千人斬の女」の収録され た時に巻末の初出一覧には、「『新潮45』1993年三月号・四月号」とありまして、当方 もそのように引用したのですが、これの掲載誌をひっぱりだしてきましたら、これは 93年三…

小沢信男著作 225

「悲願千人斬の女」の小沢信男さんによるあとがきの紹介を続けます。 次は、稲垣足穂さんについてであります。小沢さんと稲垣足穂さんの接点はなんで ありましょう。まずはその接点についてであります。 「 稲垣足穂その人に出会ったことはないけれども、そ…

小沢信男著作 224

小沢信男さんの歴史人物ものですが、昨日の参考資料の一覧を見てもわかるように、 ずいぶんと仕込みに時間がかかっています。「悲願千人斬の女」の初出は「新潮45」 96年二月号、三月号でありますが、この時点では、これが単行本となるかどうかも わからない…

小沢信男著作 223

「文献の藪へ踏み入ってみる。われながら物好きな気がしないでもないけれども。」 とありまして、小沢さんは、文献にそっての真相究明を行っています。 とりあえず、参考とした文献名を記していくことにしましょう。 1 「松の門三艸子歌集」 大正九年 門人…

小沢信男著作 222

小沢信男さんの「悲願千人斬の女」のあとがきを読んでいます。小沢さんの著作を 紹介しているのですが、小沢さんのあとがきは、自著解説のようなところもあって、 とてもありがたいものです。本文を読む前に、あとがきをのぞくというのは、推理 小説のなぞと…

小沢信男著作 221 

稲垣足穂、松の門三艸子、芦原将軍などについて書いてきた結果についてです。 小沢さんのあとがきの続きです。 「 これが踏切り台になったのか、その後もおりふし、風変わりな人々の評伝にとりくむ 機会がめぐってきました。書き溜まるほどに、いずれは<近…

小沢信男著作 220 悲願千人斬の女

「裸の大将一代記」に続いて刊行された単行本は、「悲願千人斬の女」となります。 悲願千人斬の女作者: 小沢信男出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2004/08/10メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (4件) を見る 装丁 南伸坊 装画 豊国「俳優…

小沢信男著作 219

「裸の大将一代記」の元版がでた時に、どのような評がでたのでしょうか。 当方の手元にありますのは、毎日新聞の読書欄「今週の本棚」のトップを飾った川本三郎 さんによる書評です。掲載は、2000(平成12)年3月26日であります。元版がでたの は、同年2月2…

小沢信男著作 218

「裸の大将一代記」を読むに、小沢信男さんが姿を見せるところをつまみ食いのように していくというのは、邪道ではありますが、こういうのもありでしょう。 もちろん、この本は山下清さんの評伝でありますから、母親をはじめとする家族、貼り 絵の才能が開花…

小沢信男著作 217

「裸の大将一代記」に小沢信男さんが顔をだすところを、もうすこしです。 昭和20年東京大空襲の後の話です。 「この三日間に、清は焼死体を、どうやら見すぎた。『それを時々思い出すので、死人を 思い出すと気持ちが悪くなってきます。・・・夜の真っ暗な所…

小沢信男著作 216

小沢信男さんは、「裸の大将一代記」のことを「それにしてもでしゃばりすぎて、なかば 自分史になってしまったような」といっています。この本を読むのに、山下清さんのこと をそっちのけにして、小沢さんの自分史的なところばかりを拾い上げて読み返してみ…

小沢信男著作 215

小沢信男さんは、深沢七郎と山下清について「その後の遁走ぶりなども似たところが あるようで」と記しているのですが、山下清については、ドラマなどでとりあげられて いるせいもあった、本当のところはわからないまでも放浪のイメージは定着しています が、…

小沢信男著作 214

「裸の大将一代記」の最初のところで、深沢七郎のことに話題が及びます。 「昭和三十一年(1956)に深沢七郎の『楢山節考』が出現したときは、文壇もジャーナ リズムも愕然とした。文学青年のはしくれの私もその一人だった。近代の小説はこう いうものだと漠…

小沢信男著作 213

山下清さんの貼絵作品を芸術と認めるかどうかが、論争になった時代があったとの ことです。「裸の大将一代記」には、山下清さんの作品が初めて大きな話題となった 「精神薄弱児童養護展覧展」と、それがきっかけとなってできた「みずゑ 臨時増刊号」 のこと…

小沢信男著作 212

小沢信男さんの作品の中で「裸の大将一代記」は、やはり画期的なものですね。 テーマが東京ものでも、文学者でも、文学運動についてのものでもないこと、時間を かけた、書き下ろしの長編評伝であったことなどがあげられます。 長いこと小沢信男さんの読者(…

小沢信男著作 211

選考委員さんの選評がありましたら、当然のこと「受賞者のことば」もありです。 小沢信男さんによることばです。 「山下清は1922年の生まれで、私は五歳下になります。その生い立ちから追跡して ゆくと、昭和の激動期をともに生きぬいた兄弟分のようにも思え…

小沢信男著作 210

多田道太郎さんの選評を転記しながら、なるほどなと思いながら読んでおりました。 この選評を見るのは、10年ぶりのことでありますし、そのときはさらっとしか見ており ませんでした。 多田さんが小沢さんの本文から引用している「乞食絵師山下清の生涯とその…

小沢信男著作 209

第四回桑原武夫学芸賞の選評つづきです。 本日は、多田道太郎さんによるものです。 「『裸の大将一代記』。原稿用紙にして何百枚という大冊、読み終わって納得、なっと く。話がすすむにつれ、山下清という人間と作品のイメージがひろがり、深まり、感銘 が…

小沢信男著作 208

第四回桑原武夫学芸賞の選評つづきです。 本日は、河合隼雄さんによるものです。 「『裸の大将一代記』は何と言っても面白い。ひきこまれてどんどん読み進んでゆくのだ が、ときどきはたと立ち止まらされる。そして考えはじめると、これまたどこかで止まれ …

小沢信男著作 207

桑原武夫学芸賞は潮出版社が主催ですから、発表は「潮」7月号に行われることになっ ています。 小沢信男さんの受賞発表を伝えるのは「潮 2001年7月号」となります。この号に は、受賞作の紹介、選考経過、選評が掲載されています。 まずは「選考経過」の紹介…

小沢信男著作 206

小沢信男さんが2001年に受賞された「桑原武夫学芸賞」というのは、かなり地味な賞 であるようです。文芸関係の賞で一番話題となるのは「芥川賞」とか「直木賞」であり ますが、あれはどちらも新人賞的な色彩のもので、これから売りだすぞという人に与え るも…

小沢信男著作 205

小沢信男さんの「裸の大将一代記」は、「朝日人物事典」(朝日新聞社刊 1990年) の「山下清」についての項の全文引用からはじまります。全文引用したうえで、 「限られた字数の記述とはいえ、いささかこれは、ものたりない。通説をなぞって事実 誤認もある…

小沢信男著作 204  裸の大将一代記

小沢信男さんの「んの字」のあとがきの書き出しは、次のようになります。 「ということになって恐縮です。まだ生きているけれど、もう死んでもおかしくない ので『小沢信男全句集』。 そもそも少年叙情詩人でスタートして、青年時よりぽちぽち短編小説を書き…

小沢信男著作 203

全句集「んの字」のあとがきに、小沢さんは次のように書いています。 「当時(83年頃?)は久保田万太郎句集一冊がお手本で、他は眼中になし。万太郎句に はしばしば魅力的な前書きがあって、その模倣をこころがけました。いまみればいかにも 初心、季重なり…

小沢信男著作 202

多田道太郎さんと小沢信男さんの軌跡は、どうして交わるようになったのだろうかと 思っています。一番ありそうなのは鶴見俊輔さんまたは「思想の科学」を通じてであり ましょうし、そうでなければ小沢さんが参加していた「ヴァイキング」の人のつながり によ…

小沢信男著作 201

全句集「んの字」に寄せた多田道太郎さんの跋文には、次のようにあります。 「『膝』とか、『足の裏』とか、からだの妙なところが気になる方なんですね。」 「『うなじ』も『膝』も可憐な女それとも女の子の『涼しい』色気なんですね。 暑苦しいのは嫌い。暑…