今年も山猫忌 8

 高橋悠治さんと柳生弦一郎さんによる「ハハハのがくたい」を読んでいると、作品と
いうのはどのように読んでもいいということがわかります。これは長谷川四郎さんの
作品であるから、特別にそうであるのかもしれません。この作品は、このように読んで
もらいたいという、作者の気持ちがはいっているものもあるでしょうが、四郎さんの
作品は、読者の自由な読み方をしばるものではありません。
 四郎さんの「アラフラの女王」から、「ハハハ」に関するところから一つエピソード
を抜いて、それで絵本を作ったのでありました。
「おじいさんはね、と、おじいさんが言いました。そのハハハ部落に半年ばかり住ん
どったよ。ハハハ部落ってのは、ハハハ王国にあるんだが、部落と王さまとは、ぜん
ぜんかんけいなしさ。王さまがどこに住んどるか、だれも知らんかったよ。
おっそろしく口がわるくて、あらっぽい連中が住んどるんだが、連中はケチくさいとこ
ろが、まるっきりなかったね。魚とりのめっぽう上手な連中だったよ。魚なら、なんで
もとってきてやるぜ、とえばっとったね。
 わしはおやとい楽隊のコックだったが、なにもめしばかりたいとったわけじゃない。」
 「ハハハのがくたい」の本文が始まる前、表紙裏の一面黒いページの真ん中に、白抜き
で、「うまくいくかな? やってみなきゃ わからんね」と記されています。
これは、高橋悠治さんと柳生弦一郎さん、お二人の対話のようにも思えます。
「うまくいくかな?」というのは柳生さんでしょうか、「やってみなきゃ わからんね」
というのは、長谷川さんのようでもありますが、この場合は高橋悠治さんの役でしょう。

ハハハのがくたい (こどものともコレクション2009)

ハハハのがくたい (こどものともコレクション2009)