本日に岩波「図書」12月号が届いておりました。
編集部からの「こぼればなし」見ましたら、表紙の加藤静允さんの連載は、
今月が終回とのことです。加藤さんの表紙絵と文章が始まったときには意外
な感じがしたものですが、やっとなじんで来たときには終わるというのは残念
なことであり。
同じく、今月で終わるのは金文京さんの「東京碑文探訪」だそうで、こちら
も連載12ヶ月でありました。金文京さんの最終回は、つぎのように始まりです。
「いよいよ最終回である。東京で名碑の集中している場所といえば、まず谷中
と向島であろう。『東京碑文探訪』と銘打ちながら、向島に触れないのはいか
にも片手落ちで残念である。しかし向島には多くの碑文があり、最後の一回で
どれを取り上げるか選択に迷う。そこで散歩の一助にという初回の趣旨どおり、
道にそって主な石碑を紹介することにしたい。」
向島という地名を目にしても当方などは、あまりイメージがわかないのです
が、浅草から言問橋を渡ったら向島となるのですが、浅草寺界隈とくらべると
人は少なくて、散歩の人も多くはなさそうです。
金文京さんが、向島で訪れる碑は、ほとんど馴染みのないものばかりであり
まして、これまでこの連載をほぼスルーしたのは、なじみのない碑ばかりが紹介
されていて、しかも漢文での表記であったからですね。
そんなことも関係してか、最後の最後にということで紹介する碑文についてで
す。
「これら数多の碑の中で最も新しく、もっとも小さい碑を紹介したい。その碑は
長命寺の碑林の片隅に遠慮深く佇んでいる。表には、
風のように踊り
花のように恋し
水のように流れる
裏には、
子供時代 大好きな私のふるさとに感謝をこめて
平成十五年二月吉日 植樹
とある。そういえば、『男はつらいよ』シリーズでの彼女は浅草の
踊り子であった。ここには胸に秘めた自分の大切な思いと自らの原点を、
未来永劫に伝えたいという、長きにわたる石碑文化の真髄がある。
木の実ナナ万歳!
これをもって有終の美としたい。」
この文章に添えて、木の実さんの植樹碑の写真が掲載されています。
それにしても、最後の最後で、ずいぶんとわかりやすく胸を打つことでありま
すね。金文京さんの木の実ナナさんへの思いも伝わってくることです。
木の実さんが表舞台から姿を消して5年以上になりです。金文京さんの
文章を目にして、木の実さんはお元気かなと思うことです。