現役の元大関たち

 大相撲で大関といいましたら、その昔は番付の一番上に位置すると聞いた

ことがあります。横綱が置かれるようになったのは、明治に入ってからでしょ

うか。

 当方が子どものころは大関になるのはとっても大変で、あの力士は十分に

大関の実力はあるのに、留め置かれて関脇で終わったというような話を聞いて

おりました。相撲がハングリースポーツであって、中学をでて相撲取りになる

というのが当たり前(中学に行きながら相撲取りをしていたなんてのもありま

したね。北の湖は中学校卒業の時には幕下にあがっていました。)

 大学出の相撲取りもモンゴルからの力士もいない時代の話であります。

大関になることが出来ず、最強の関脇といわれて、今も記憶に残っているのは

長谷川という力士でありました。

それとくらべると、最近は一定の成績をあげるとすぐに大関になるようで、そ

のことからも大関の地位が安くなっているようです。そのせいもあって現在の

番付にはあちこちに元大関というのがいまして、その昔では大関を陥落したら、

引退というような雰囲気でしたので、隔世の感ありです。

 そんなことを思ったのは、次の本を手にしたからでありますね。

芥川賞候補傑作選 平成編1 1989-1995

芥川賞候補傑作選 平成編1 1989-1995

  • 発売日: 2020/11/04
  • メディア: 単行本
 

  昭和から平成にかわる頃の芥川賞の候補にのぼった作品から、読売新聞の

鵜飼哲夫さんが選(三十代の編集者と一緒に)したものです。

芥川賞といえば、もともとは純文学の新人賞という位置づけでありますが、

いまではもっと権威を持っているかのように受け止められています。

 当方の世代にとっては、あの人も、この人も芥川賞には縁がなかったと思

うのでありますが、最近の人は芥川賞を受けていない人なんてと思うのでは

ないでしょうか。

 たしかに芥川賞を受けた作品と、惜しくも受賞を逃した作品というのは、

目にする機会がダントツに違ってきて、やはり受けたほうが商業的な成功を

おさめるようです。

 この作品集におさめられたなかでは、河林満さん、小浜清志さんという

作家さんは、初めて知る名前でありました。河林さんは辻原登さんと、小浜

さんは笙野頼子さんとぶつかって涙をのんだことになります。(それぞれ

複数回候補になっていますが)

 結局は芥川賞に縁のなかった佐伯一麦さんは、そういえば、次のような本

を残していますし、芥川賞を受けることはなかったが選考委員になっている人

もいますね。

 その昔は、ずいぶんと芥川賞の壁は高かったといえるでしょう。

芥川賞を取らなかった名作たち (朝日新書)

芥川賞を取らなかった名作たち (朝日新書)

  • 作者:佐伯 一麦
  • 発売日: 2009/01/13
  • メディア: 新書
 

 今回この本を借りたのは、ここの多田尋子さんの作品が入っていたからで

あります。最近まで名前を知ることのなかった作家さんですが、この方は六度

芥川賞候補になったということで有名な方だそうで、昨年に作品集がでた

ことで、文学好きのブログなどで話題になりました。

体温

体温

  • 作者:多田 尋子
  • 発売日: 2019/10/25
  • メディア: 単行本
 

  多田さんは昭和七年のお生まれとありまして、作品を発表していたのは1990

年頃で、すっかり過去の人ですが、昨年にでた作品集には未収録の「毀れた

絵具箱」という作品を、今回読むことができました。

 なかなか不思議な味わいの作品でありまして、これで芥川賞を受けていたら、

多田さんはそのあとも創作を続けたのだろうか、それとも受賞しなかったのが、

良かったのかと思ったりです。

 実力は十分に芥川賞にふさわしいと、伝説の存在になった感がありますが、そ

のほうが多田さんは幸せだったのかもしれません。

 

繰り返し読む

 このところ朝の個室で読んでいる文庫本にあったくだりです。

「適当な一冊を手にし、適当な文章を読み散かし、時間が過ぎて行きます。

原稿の締め切りさえなければ、そういう時間の過ごし方はとても幸福です。

長谷川四郎の文章は、そしてその流れに身をまかせることは、他の誰の文章

にもまして、そういう幸福を、いつも与えてくれます。」

 上に引用したのは坪内祐三さんの「考える人 長谷川四郎」の冒頭の一部

となります。

考える人 (新潮文庫)

考える人 (新潮文庫)

 

  坪内さんはなんとなく威張りんぼうというような感じを受けるのですが、

この長谷川四郎さんについての文章には、どうだというようなところがまる

でなくて、とってもいい子なのです。

 それこそ長谷川四郎さんの本を読む楽しさ(もちろん長谷川さんが本を読ん

で楽しんでいることも)をどのように伝えるか、そして長谷川さんが本を読む

ことを通じて「考える人」であったかを伝えようとしてくれています。

 この「考える人 長谷川四郎」は文庫本で14ページくらいのものですから、

それこそ繰り返し読むことが可能です。長谷川四郎さんの読み流してしまった

文章を、坪内さんに教えられて、再読するという楽しさもありです。

ほんと繰り返し読んでこそ、新しい発見もあるということで、坪内さんは、この

14ページほどの文章を書くのにあたって、どのくらい長谷川四郎さんのものを

読み込んだのかと思ってしまいました。

 今年に亡くなった坪内さんについては、この年末になってもあちこちのブログ

で話題にのぼっているようですが、小生は長谷川四郎さんを読む坪内さんを追い

かけてみようと思いました。

 坪内さんが長谷川さんに触れている文章には、どんなものがあったろうかです。

 そんなことを思っていたら、本日に坪内祐三さんの新刊が届きました。

文庫本千秋楽

文庫本千秋楽

  • 作者:坪内祐三
  • 発売日: 2020/11/20
  • メディア: 単行本
 

 

本の入替えを実施

 図書館から借りている本で、これ以上借りていても読むことができそうも

ないものを返却して、別のものを借りることになりです。図書館は一度に十冊

まで借りることができるのですが、こんなにたくさんだとほとんど手に取るこ

ともなしに終わるものもあることから、すこし絞って借りることになりです。

 図書館に対しては、いろいろな希望を持ってらっしゃる方がいるでしょうが、

当方はベストセラーよりも、長く読みつがれるものや参考資料となるようなも

のを揃えてほしいと思うものです。

 本が読まれなくなっているので、本を読む人を増やすためには、ベストセラー

を複本で揃えるのもしょうがないのかもしれませんが。

 本日に借りてきた一冊はベストセラーを好む人にとっては、どうしてこんな

のを入れるのよわけわからんというようなものです。

明朝体活字 その起源と形成

明朝体活字 その起源と形成

  • 作者:小宮山 博史
  • 発売日: 2020/09/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 一冊まるまる明朝体についての本で、こんなマニアックな本をだすほうも

だすほうですが、これの値段が4200円というのは、好きな人にとっては

バカ安でありますね。

 当方は日本語ワープロで作成した文書をプリントするときには、明朝の

フォントを使うようにしています。マイクロソフトのワードでありましたら、

MS明朝となりますね。

 明朝(みんちょう)と普段からいっているのに、「明朝体というの書体様式

は、明朝時代の出版文化の隆盛とともに生まれた」と「はじめに」にあります

のを見て、改めて中国の明朝に由来するということを知らされました。

 目次では、中国、朝鮮からいきなり舞台はヨーロッパにとんでいます。

ヨーロッパで明朝体というのは何故なのかですが、もちろんこれは宗教の布教

のためでありますね。

 これを見ますとヨーロッパにおける漢字への取り組みがわかるようです。

それにしてもヨーロッパでの明朝体への取り組みは、あくまでもアジア圏にむ

けての開発でありまして、それも宗教のためなのですからして、まあおせっかい

なことでありますが、西洋文明は宗教についてきたのでしたね。

まさに一期一会

 昨日の夜遅くに動画サイトを見ていましたら、いつもレアな動画をアップし

ている人のところに、へえーこんなのがあったのかという動画があがっていま

した。こちらの方は、著作権者に無断でアップする常習者らしく、動画サイト

の管理者から警告を受けたり、資格停止になったりしているようなので、これ

はアップされているうちにまた見なくてはと思ったのですね。

 そんなわけで、今朝になってからもう一回見ておきましょうと、その動画を

探してみましたら、これが見当たらずでありました。あらまどうしたかと、

当方のPCに残っている履歴からアクセスをしてみましたら、そのアドレスは

存在しないと戻ってきました。

 なんと、昨日見た時にはあったのに、それから十時間も立たずに姿を消した

のでありますか。著作権者に無断でネットに上げたら犯罪ですと言われること

ですが、こういう権利を無視したものを楽しんではいけないですね。

 ほんとレアな動画には一期一会のようなものもあるということがわかりまし

た。

 本の世界にもその昔は著作権者に無断で出版する海賊版と呼ばれるものがあ

りましたですね。いろいろとあって出版できないものを、作者に無断でだして

しまうもので、その作品は初出の雑誌をのぞくと、その地下出版物でしか読む

ことができないということが続いていました。

 あとは、海外の医学書などリプリント版というような言い方で、海賊モノが

出回っていました。その昔の海外からの医学書というのは、めちゃくちゃ高額

でしたので、それを必要とする医学生には手が出ないものでしたので、そこに

目をつけてセールスが行われていました。1ドルが360円時代で、洋書の値

段が、もとの国の定価の何倍もしていた頃のことです。

 それとくらべると、この時代はありがたい。最近に入手した翻訳書でありま

すが、これを英語のペーパーバックで購入するとしたら、ずっと安いのであり

ますよ。まあ問題は英語では読むことができないということでありますが。

ブルース・チャトウィン

ブルース・チャトウィン

 

 

Bruce Chatwin

Bruce Chatwin

 

 

ハッピーマンディにあらず

 本日までGo to 三連休であちこちにぎわったようです。京都はちょうど紅葉

の時期になるせいもあって、名所は車が渋滞するほどであったとかです。

この休みが終わったら東京、大阪に続いて京都でも感染者が増えたら、なかな

か困ったことになりますね。

 この月曜日があかい日となっているのは、Go toのための祝日ではないので

ありますね。ずっと昔からある由緒ただしい祝日でありますよ。当方が本日の

お休みの趣旨にそった一日を過ごしたかといえば、それは疑問なのですが、

朝からパンの仕込み、庭の片付けの残り、そしてこれから数ヶ月間に食する

人参を土のなかに埋めることなど、そこそこ良く働きました。

 パンのほうは、寒くなっていることから発酵があまり進まず、いつもより

発酵に時間がかかっています。朝9時に仕込んで、焼きにはいるのは、夜9時

すぎになりそうでして、これが終わるまで本日の作業は続きます。

 休み明けには図書館に本を返さなくてはいけないのですが、これがまるで

読むことができていないことで、作業の合間には借りた本、ロッジの自伝な

どを手にすることになりです。

 このところ読んでいるもので、印象に残るものといえば新聞連載の「語る

 永井愛」さんのものであります。1951年生まれということで、当方と同年

生まれ(学年は当方が一つ上かな)の劇作家さんでありますが、同じウサギ

年の大石静さんと二人で「二兎社」という団体を作って活動をしていました。

どういうことから結成にいたったのかということも書かれていて、そうなの

かと思いました。

 永井さんはとっても骨っぽい芝居を作られるのですが、あまりそれを意識

させずに見せてくれます。この「語る」の8回目では、永井さんの代表作の一

つである「こんにちは、母さん」が取り上げられています。

 加藤治子さんと平田満さん二人による芝居ですが、当方は舞台を見ること

ができずにTVドラマ化されたのを見ることができました。この作品を演じる

にあたっての加藤治子さんの取り組みが、永井さんによって語られています。

芸歴の長い加藤治子さんの代表作といわれる作品となったわけですから、

加藤さんの力の入り方も半端なかったのでありましょう。

こんにちは、母さん

こんにちは、母さん

  • 作者:永井 愛
  • 発売日: 2001/03/01
  • メディア: 単行本
 

あこがれのMADE iN USA

  トランプさんががんばればがんばるほどUSAの生産物が縁遠くなることで

あります。その昔はアメリカン・ライフといえば、あこがれでありましたし、

できればUSA製を確保したいと思ったものでありますね。(当方が中学生く

らい、1960年代中頃までのことです。)

 最近の当方の生活で、これはUSA製でなくてはと思うのは何でありましょう。

これがほとんど思いつかなくなっているのでありますね。最近購入したもので、

USA国内生産のものといえば、VitaCraftの鍋くらいでしょうか。これもたぶん

これからはアジアの工場で作られたものが主流となるのでしょうね。

 オレンジもビーフも口に入るものはできるだけ避けるようにしておりますの

で、USAの作り出した仕組み(ソフト)には依存しているものの、USAから

コンテナ船で輸入されるモノには縁が薄いことです。(動物飼料などはまわり

まわって取り込んでいるのですが。)

 そんななかで、これはUSAのメーカーのものがというのは、音楽好きには

ギターがそうでしょうし、オーディオであればアンプとかスピーカーの世界で

はUSAのメーカーにこだわっている人がいるでしょう。

 先日に放送で紹介されていた一関のジャズ喫茶ベイシーの装置はスピーカー

とアンプはともにUSAでありました。(ただし1970年頃のもの。)

 最近は、古いオーディオ装置をインテリアとして使うのがはやりであるよう

でして、すこし気取った宿でありましたら、ロビーに総額数百万円という装置

を設置して、小さな音で音楽を流していたりします。あんな使い方意味がない

ではないかとも思いながらも、うさぎ小屋に住む当方はうらやましくながめる

ことになります。

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 スピーカーはJBLパラゴンで、アンプはマッキントッシュのプリとパワーにな

ります。このパラゴンは、かなり使いこなすのが難しいといわれるもので、ここ

でどのくらいの実力を発揮できているのかと思いますが、この装置で存在感を主

張しているのはUSA製でありました。

 この装置を見物して帰ってきましたら、当方が修理にだしておりましたUSA製

アンプが修理を終えて戻ってきていました。

 当方が今から28年前に中古で入手したアンプです。これは一生ものであるので

大切に使うぞと思いましたが、片チャンネルの音がでなくなって、修理が可能か

どうかと、購入元に確認を依頼していたものです。

28年も経過して販売してくれた店が健在であるというのが、まずもって奇跡のよ

うな話であります。というのも、その昔にこの店を購入したのは気仙沼のお店で、

その店は震災で、ご主人の命は大丈夫だったものの、商品はほぼすべてだめに

なったのでありますから。

 これであの店も終わりかなと思いましたら、不死鳥のようによみがえり、今も

営業を続けていました。28年経過して、その頃に当方が付き合っていた本屋も

レコード屋もほぼすべて姿を消したのに、震災で大打撃を受けた店が生き残って

いるとは、こんな喜ばしいことはなしです。

 

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 このアンプは1986年から販売となったもので、当方のは何年に作られたもの

かわかりませんが、できてから30年は経過していますでしょう。このころの

USA製は、今よりもずっと信頼されていたことですよね。

どうしてこんなになったのかとトランプさんは思うでしょうが、トランプさんが

大統領になれたのと、USA製品の凋落とはまさに同じ道でしょうね。

 これは日本にとっても遠い話ではないかもです。

チャトウィン伝の前に

  本日の新聞夕刊を見ましたら「惜別」というページに高儀進さんの名前を

見つけました。

 このページは、最近に亡くなった人を記者が追悼する文章を寄せるのであり

ますが、ということは高儀進さんは亡くなったということですか。当方は訃報

記事を見逃しておりました。(訃報は掲載されていたのかな。)

 記事の中には、「昨年秋に末期がんの告知を受けた」とありました。亡く

なったのは、今年の8月4日ということです。そうなのか、それはまったく知り

ませんでした。

 一ヶ月ほど前に、今年のノーベル文学賞を話題とした時に、当方が思うこの

文学賞にふさわしい作家として、ディビッド・ロッジとジョン・バースの名前を

あげているのですが、もちろん、どうらの作家も翻訳で読んでいるのですが、

とりわけ日本でディビッド・ロッジが読まれているとすれば、それはとりもなお

さず高儀進さんの翻訳のおかげでありますよね。

 これまでディビッド・ロッジの小説作品はほとんどが高儀さんの翻訳で刊行

されているのですが、それこそ版元は白水ではなく他社のこともありましたが、

翻訳はかわらずでありました。

 高儀さんは他の作家さんの作品も翻訳しているのですが、こだわりは「定評

ある訳があるものを訳すより、新しい作品を世に紹介すること」だったそうで

す。

 この「惜別」を書いているのは編集委員「三浦俊章」さんでありまして、

三浦さんも次のように書いています。

「小説で最もひかれたのは、現代英国きってのコミック小説の名手ディビッド・

ロッジの作品だった。『交換教授』など大学を舞台にしたキャンパス・ノベルは

笑い転げたあとに人間とは何かを考えさせる深いメッセージが含まれていた。」

 当方は笑うだけで終わってしまっているのですが、それでもそうした笑いを

求めて次から次へと買っては積み上げていたのです。たぶん、まだいくつかの

作品は購入して未読でありましょう。まずはそれをすこしずつ読まなくては。

 ちなみに刊行されたロッジの本で、最後のものは昨年の年明けにでた「作家

の運」という自伝でありました。

 そして、最後の翻訳となったH・G・ウェルズの自伝的小説だったとのことで、

そういえば、ロッジの書いた「絶倫の人」というウェルズについての本の訳者も

高儀進さんでありました。

 チャトウィン伝よりも先に高儀さん訳のロッジ伝のほうに手をつけなくては

いけないことです。

絶倫の人: 小説H・G・ウェルズ

絶倫の人: 小説H・G・ウェルズ

 
作家の運:デイヴィッド・ロッジ自伝

作家の運:デイヴィッド・ロッジ自伝