2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧

小沢信男著作 199

雑誌「本とコンピュータ」は、大日本印刷がスポンサーとなって、「紙と電子の本の 現在をさぐる」ことを目的に期間限定で刊行されたものです。 編集には南陀楼綾繁さんとして有名になる前の河上進さんが参加されています。その せいでしょうか、小沢信男さん…

小沢信男著作 198 んの字

句集「足の裏」に続いては、「小沢信男全句集 んの字」となります。 2000年4月19日初版 トランスアート刊行 2800円(税別) 「本とコンピュータ」という雑誌がありましたが、その雑誌の版元が、オンデマンド での出版を試みて、そのシリーズの7冊目でありま…

小沢信男著作 197

小沢信男さんの「あの人と歩く東京」が刊行されたのは1993年でありますが、 その巻頭におかれた「荷風東へゆく」と「東京遍路帖・同行二人」の半分は、 「隅田川」をはさんだ両国のものであります。 台東区谷中から隅田川をわたって墨田区生涯学習センターに…

小沢信男著作 196

多田道太郎さんは小沢さんの句集「んの字」の解説で、「鳥渡る十句」を激賞していま す。多田さんが「物語俳句」呼ぶところの連作を、すべて引用したいところであります が、これはぐっとがまんです。句集「足の裏」では、この連作は巻末におかれています。 …

小沢信男著作 195 足の裏

小沢信男さんが、次に発表されたのは、句集「足の裏」であります。 これもまた一般にはあまり流通しなかったもののようです。 句集「足の裏」 1998年8月8日刊行 発行所 夢人館 発行者 大西和男 装丁 直井和夫 定価1200円(税別) この句集の「あとがき」を…

小沢信男著作 194

小沢信男さんが「生涯かけて好きな本つくりの夢を追いつづけていた」というのは、 亀山巌さんについてもいえることであります。 亀山巌さんは、会社人としても相当に異色の経歴の持ち主でした。この時代であり ましたら、こういう生き方は許されるでしょうか…

小沢信男著作 193

坂本篤さんのことを検索かけましたら、山口昌男「内田魯庵山脈」にあたりました。 昨日に小沢さんの文章から引用した、次のくだりは「内田魯庵山脈」に通じるので あります。 「具眼の士、ないしは底抜けの物好きが、ついそこらの市井にいて、生涯かけて好き…

小沢信男著作 192

有光書房 坂本篤さんについての小沢信男さんの文章の続きです。 「思えば国と争うのも祖父ゆずり。坂本篤の生涯の自負が、ここらにあったのでしょう。 好きな江戸文化の継承のためならば、押収も発禁もなんのその。儲けるときは笑いが とまらぬほど儲けて、…

小沢信男著作 191

警察に呼ばれた数かぞえきれない坂本篤さんにとって、一番有名な事件は1961年に 発生しました。 小沢さんの文章には次のようにあります。 「戦後、有光書房をおこして、いよいよ江戸の春画や好色本の発掘と刊行に専念します。 1960(昭和35)年より「艶本研…

小沢信男著作 190

小沢信男さんの「坂本篤」さんについての文章に、つぎのくだりがありました。 「 明治以降、筆禍で罰金や入獄をくりかえした横綱は宮武外骨で、梅原北明が大関だ とか聞くけれど。坂本篤も、警察に呼ばれた数は「数えきれない」と当人の弁です。」 坂本篤さ…

小沢信男著作 189

「昨日少年録 その1」は、「EDI」というこだわりの版元のせいもあって、小沢信男 さんの著作としては珍しく限定本のような趣となっています。もともと少部数のもので ありますし、価格もそれなりのものでした。 亀山巌さんと、亀山さんにつながる人について…

小沢信男著作 188

「EDI ARCHIV 亀山巌」1997年8月20日 エディトリアルデザイン研究所刊につい ては、目次を転記して、さらっと終わらせようと思っておりましたが、手にして見ま すとあちこちで手がとまることです。 「EDI ARCHIV」版は、むかし図書館で手にした岩波文庫図書…

小沢信男著作 187 亀山巌

「あの人と歩く東京」の次に刊行されたのは、次のものです。 「EDI ARCHIV 亀山巌」1997年8月20日 エディトリアルデザイン研究所刊 名古屋豆本の版元でありました「亀山巌」さんについてのエッセイをまとめたものと なります。エディトリアルデザイン研究所…

小沢信男著作 186

小沢信男さんの「あの人と歩く東京」の最後におかれているのは、「掌篇・大塚少年」 という作品です。わずか4ページにもみたないものですから、ショートショートといって もよろしいのでしょうか。タウン誌「うえの」91年10月号が初出となります。 1988年に…

小沢信男著作 185

小沢信男さんと辻征夫さんのまじわりについて見ています。すこし材料が不足して いるようで、うまくまわっていきませんです。 辻さんという純度の高い詩人にとっての俳句への取り組みと、余白句会での俳句 指導と小沢さんの作品への評価というのがテーマとい…

小沢信男著作 184

昨日、引用した小沢さんの文章には「日本の首都東京は、東から西へ重心を移して 発展してきた」とありました。この東から西へと重心を移して発展という過程におい て、街壊しがおこっていたといえましょう。 小沢さんは街壊しとなっていないところを探して、…

小沢信男著作 183

「あの人と歩く東京」のテーマは、冒頭におかれた「荷風東にゆく」のなかにありで す。 「日本の首都東京は、東から西へ重心を移して発展してきたが、彼(荷風)の生活の重心 はそれに逆行してきました。荷風東へゆく生涯でした。」 荷風の生きた時代は、日…

小沢信男著作 182

小沢信男さんの向島散歩ですが、同行は辻征夫さんで、ここは詩人が育った場所です。 小沢さんは、辻さんの詩作品「星」に着目して、次のように書いています。 この「星」という作品は、「星菫派」という言葉から触発されたものだそうです。 「 鉄管、機械の…

小沢信男著作 181

小沢信男さんにとって、辻征夫さんは大変重要な人物であります。 小沢さんは、「辻征夫論を書く人は、一度はこの向島の路地に来てみる必要がありま しょう。」といっていますが、これを実践した方はいるのでしょうか。 本日、手にしたちくま文庫新刊「本と怠…

小沢信男著作 180

向島散歩にでかけた小沢信男さんは、辻征夫さんと隅田区役所を出発し、長命寺裏の 桜餅で一服し、辻さんが育ったコアな向島に向かいます。 「川を背に、墨堤通りをまたいで、向島五丁目の横丁に歩み入ります。花街のはずれの、 料亭や小料理屋もちらほらする…

小沢信男著作 179

小沢信男さんが辻征夫さんが育った墨田区向島を散歩するのですが、向島という地名 は聞いたことがあるものの、足を運んだことはありませんです。東京に住んだ短い期間 に訪問することはなく、その後に遊びにいった時も、浅草あたりから川向こうの隅田区 役所…

小沢信男著作 178

「あの人と歩く東京」に収録の「東京遍路帖・同行二人の巻」で、小沢さんが現実に一緒 に現地を歩いたのは、92年当時に現存であった詩人 辻征夫さんです。 辻征夫さんのエッセイ集「ゴーシュの肖像」の紹介には、「1939年東京浅草で生まれ 向島で育つ。2000…

小沢信男著作 177

「あの人と歩く東京」の辻征夫さんとの同行二人のところから、話がとんで佐山哲郎 さんの句集「娑婆娑婆」に話題がいってました。 小沢さんは、「剽窃とは、表現を、作家様の私有とみるところからはじまる。つまり 私有権の侵害」といっています。 音楽業界…

小沢信男著作 176

小沢さんの文章に「カナカナが天地を聾して鳴きしきる」というのがあって、これを 見ましたら、「かたかなおぼえた谷中のかなかな」という「ことばあそびうた」の一節が 思い浮かびました。小沢さんは谷中に住み、佐山さんは根岸にお住まいだそうです。 佐山…

小沢信男著作 175

佐山哲郎さんの「句集 娑婆娑婆」に寄せた小沢信男さんの跋文は「句集 娑婆娑婆を ひらいて」とあります。 書き出しは、次のようになります。 「ひらくといきなり、こんな句に出会います。 二ン月の荷に根菜とコンサイス なんだこれは、ただの語呂合わせでは…

小沢信男著作 174

佐山哲郎さん「句集 娑婆娑婆」の版元は、以前に「菅原克己全詩集」を刊行し、 この3月には小沢信男さんの「本の立ち話」を刊行した「西田書店」であります。 地味な出版社でありますので、袖すり合うもでありまして、勝手に宣伝です。 昨日は、表紙カバー…

小沢信男著作 173

「あの人と歩く東京」でありますが、ここでいう「あの人」というのは先人だけの話で はなく、同時代の人もとりあげられているのでした。 「この<同行二人>シリーズで、これまで私はもっぱら故人とともに歩いてきました。 古今亭志ん生さま。内田百けんさま…

小沢信男著作 172

中野重治さんが本所に住んでいたところを走っていた市電はどの系統であったろうか と記しましたが、小沢さんの文章には、昨日に引用した先のところに「電車も23番の 都電が走っていた」とあるではないですか。まったく何を見ているのでありますか。 中野重治…

小沢信男著作 171

墨田区千歳三丁目を走っていた電車は、なんであったのかと思って検索をかけてみま したら、路面電車愛好の方によるページが、すぐに見つかりました。かって本所区を 走っていた何本かの電車のなかで千歳三丁目を走っていたのは、都電23系統ということ がわか…

小沢信男著作 170

本所つながりでの「あの人と歩く東京」であります。この本の中には、本所があち こちに登場しそうでありますが、まずは先日に引用した中野重治「街あるき」を手に してみます。 小沢さんは、「この作品は、本所に下宿する大学生が東京の街々を歩きまわる話」…