セ・パ さよならプロ野球16

 今年のシーズンもロッテは開幕から順調なスタートで、今現在ではパリーグの首位を
走っているようです。そのむかしであれば、五月の連休が終わった頃から失速して、
シーズンが終わってみたら指定席のようなところに沈んでいたのですが、最近は昔の
面影はないことです。
 川崎球場のロッテファンであった川村二郎さんの朝日新聞の記事には、次のようにあり
ました。(1992(平成4)年4月20日
「 そのロッテは今年から千葉に移った。数々の思い出を恵んでくれた川崎の常連として
はもちろん残念だが、移転によってほどほど以下がほどほどに近づくならば、ロッテの
ためというより、パ・リーグのために喜ぶべきだろうかと思う。」
 パ・リーグのために喜ぶというのは、まさにそのとおりでありまして、閑古鳥がなく
ことで有名なロッテの主催ゲームは、千葉に移って、それまでに倍するファンを集めて、
大成功となったのでした。それから日本ハム楽天と来て、いまではセ・リーグよりも
観客動員が多くなっているようです。
 作中の主人公が、セ・パを勝ち組、負け組というような使い方をしているのですが、
最近では、これが正反対のようになっています。この小説を、これから読む方は、
川崎球場の雰囲気を判らなくては、なぜ主人公が、「おれはパだ」というのか、
理解ができないことでしょう。
 この小説を紹介した川本三郎さんの書評(新日本文学に掲載のも)から引用すること
にいたしましょう。
「 セ・パ二分法は、日本人の国際感覚から生活感覚にまでみごとにあてはまる。!
だがしかし本書の面白さ、良さはこノセ・パ二分法だけにあるのではない。それだけ
だったらパの、そのまたロッテというマイナー球団を判官びいきしている中年男の少し
世をすねたものの見方になってしまう。吉川良はこの『敏男』のくせのある野球感が
時代への『呪詛』になる寸前でそれを『発見の喜び』に変えていく。テスト生として
ロッテに入団した佐藤文彦投手という無名の、そのまた無名の選手を発見したときの
喜びが描かれているからこそ、本書は”マイナーファンの心意気ここにあり”という
陽気な『男気』のほうへ開かれていくのだ。」

セ・パさようならプロ野球

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