2009-10-01から1ヶ月間の記事一覧

老年の文学2

小島信夫さんの私生活は庄野潤三さんとはちがって「夫婦の晩年の理想の生活」 とはいえなかったようであります。 「息子は末期のアルコール中毒患者であり、妻は何年も前から、今や八王子の自分の家 からも、今までの病院からも追い出される彼を国立の家へ引…

老年の文学

今からほんの30年程前には、80歳の長老作家が意欲的な長編小説を発表したら、 世の注目を浴びたものです。この時に、当方の頭にあるのは、石川淳さんの「狂風記」 でありますが、当時の「すばる」に連載して上下2冊の単行本となったと話題になった もの…

シベリア抑留6

本日の新聞を見ましたら、シベリア抑留者への補償金の支払のための法案を 提出するとありました。昨年には「民主党」が軸となって法案の成立を目指した のですが、この時は廃案となったものとあります。今回は、政権交代を受けての ことで、長年の夢がかなう…

シベリア抑留5

シベリア抑留から無事に生還したとしても、「心理的負荷による障害」に 陥った人が、相当にいらしたのでしょう。こうした方の数を把握することはできま せんが、「仙台が親戚」様に記していただいたようjに香月泰男さん、石原吉郎さん ともに、アルコール依…

シベリア抑留4

香月泰男さんの大掛かりな展覧会を、数年前に見たことがあります。 シベリアシリーズがずらっとならんでいたのですが、この並べ順については、 いろいろとあるようです。 昨日の「立花隆」さんの著書のあとがきには、次のようにあります。 (ついでのいえば…

シベリア抑留3

戦争が終わって5年ほどしてから生まれた当方には、シベリア帰りとか、 満州からの引揚者というのは、身近な存在でありました。特に、小学校の時に 移り住んだところは、都市近郊の開拓地でありましたが、そこの人々は皆が 満州からの引き揚げ者でした。当方…

シベリア抑留2

シベリア抑留のもとになった戦争が終わって、すでに60余年がたっています。 兵士として従軍した人たちも80代になりました。抑留者で、証言をしている人は ほとんどが当方の父の世代となります。戦争に敗れていろいろな場所で武装解除 され、兵隊たちは捕…

シベリア抑留

岩波新書で「シベリア抑留」という本がでました。著者は栗原俊雄さん毎日新聞記者 で、昨年に大阪本社発行の夕刊に連載した記事が基本となっているそうです。67年 生まれの記者さんが取り組まれました。シベリア抑留―未完の悲劇 (岩波新書)作者: 栗原俊雄…

薔薇と不動3

青いバラをつくることに成功して、商品として売り出したという記事を見て、 中井英夫さんの作品世界のことを思いました。サントリーの商品紹介にある 写真を見て、これを青というのかとすこし違和感を感じたのですが、現代の 技術をもってしては、これまでな…

薔薇と不動2

得に植物愛好家でもないのに「青いバラ」なんてのを知っているのは、中井英夫さん のおかげであります。三一書房からでた「中井英夫作品集」で「虚無への供物」を 読んでから中井英夫さんの作品は気になる存在になっていました。中井さんの薔薇への おもいを…

薔薇と不動

本日の新聞には、サントリーが11月から「青いバラ」を発売することになったと ありました。20年の歳月と30億円の開発費をかけて取り組んできたのが、 やっと花開いたようです。 (http://www.suntory.co.jp/company/research/hightech/blue-rose/index.h…

本日はブックオフへ

本日の仕事をすこし早くに切り上げ、帰りにブックオフに立ち寄りました。 ブックオフへの立寄は週末を迎えた金曜の夜としていましたが、なんとなく 金曜日の夜にはせどりの方々の巡回がおわっているようで、食指が伸びるものが 少ないように感じるのでした。…

榛地和装本9

昨日に引いた藤田三男さんの文章に「苦節十年型(どころか二十年以上)の文士を 復活させた編集者・古山高麗雄さんの炯眼に敬服していた。」とありました。 長時間の雌伏から目覚めた最初の作家が「中里恒子」さんで、それは昭和46年の ことだそうです。中…

榛地和装本8

編集者の藤田三男さんは、「『苦節十年型』(どころか二十年以上)の文士を 復活させた編集者・古山高麗雄さんの炯眼に敬服していた。」とあります。 古山さんが編集していたのは、「季刊藝術」ですが、これに掲載された中里恒子 さんの「残月」を読んだとき…

榛地和装本7

藤田三男さんの「榛地和装本」の終わりのほうには、和田芳恵さんとその関係者の 本がまとめて取り上げられています。 和田さんは昭和43年6月に倒産して再建したばかりの河出書房新社の役員として 藤田さんの前に登場します。更正会社の新社は「債権者」であ…

旅の空から

野暮用がありまして旅にでています。山の中の温泉ですからコンピュータは、お呼びじゃなくて、本日はこれで失礼します。

榛地和装本6

藤田三男さんは河出書房の編集者ですが、「榛地和装本」で取り上げれている 本に馴染みのないものが多くて驚きです。特に人気のあった作家のものは遠ざけて いたせいもあって、そういう本があったなというくらいのものです。 本日に話題とする本は、河出書房…

榛地和装本5

書店で、全く知らない著者のものを購入するというのは、けっこうリスキーで ありまして、運を天にまかせてレジに持参することになります。 見ず知らずの著者のものは、信頼する書評家の評を目にした後に購入するか、それ とも図書館で借りるほうがよろしいの…

榛地和装本4

小生の手元にある「榛地和装本」は、数ヶ月前に「日本の古本屋」を通じて入手した ものでありますが、こちらのサイトでは久しぶりに見つけたものでしたので、即刻、 注文をいれたのでした。これには、謹呈 著者という短冊が貼られているのですが、 そこには…

榛地和装本3

河出書房の編集者 藤田三男さんは榛地和(しんち かず)の名前で本の装幀も しておられます。「榛地和装本」は、藤田さんの装幀したものをまとめ、それへの 文章をつけたものです。榛地和がかかわったもので、小生がなじんだものは、すく なくて、わずかに足…

榛地和装本2

「榛地和装本」を以前に「日本の古本屋」で検索しましたら、なかなかヒットしな かったのでありますが、やっとこさでヒットして確保した途端に、確保したより安い 値段で次々とでてくるということがあります。今回、ここでとりあげるために 「はてな」の商品…

榛地和装本

「榛地和装本」というのは、本の書名でありますが、なんて読むのか分かって おりませんでした。「和装」についての本ということであれば、「榛地」という のは、なんのことであろうと思っておりました。榛地和装本作者: 藤田三男出版社/メーカー: 河出書房新…

湯川書房・湯川成一の肖像6

本日も湯川成一さんの「自作限定本について語る」から話題をいただきです。 この講演で、湯川さんは「理想的な本」というのを、次のようにかたっています。 「理想的な本というのは、・・一体どういう事になるのかと言いましたら、私は やはり読みやすくて、…

湯川書房・湯川成一の肖像5

「仙台が親戚」様に書き込みをいただきましたが「湯川書房・湯川成一の肖像」は、 伊東康雄さんがプロデュースで、編集実務を福永幸弘さんがなさったとのことです。 伊東さんは湯川本の熱心な蒐集家なのでしょう。福永さんは、印刷関係のお仕事を なさってい…

湯川書房・湯川成一の肖像4

湯川書房主 湯川成一さんのお仲間の手による「湯川書房・湯川成一の肖像」を手に することができました。 これについては、関わりの深かった林哲夫さんが、すでに以下の「daily-sumus」 で詳しく取り上げていらっしゃいますので、ご覧になられたかたも多いこ…

庄野潤三追悼3

庄野潤三さんと阪田寛夫さんのどちらを先に読みはじめたのかはっきりとしま せんが、とにかく、二人は阪田さんが亡くなるまで友人関係にありました。庄野 潤三さんの告別式には阪田さんの娘さんが弔辞を読んだとのことでありますので、 その付き合いは家族ぐ…

庄野潤三追悼2

庄野潤三さんの晩年の作品を読んでいますと、なんとなく亡父の知人の生活報告を 聞いているような感じとなります。そういえば、あの家には当方と同じような息子が いたことだが、彼は学校をでてホテルにつとめたのだよな、そうか彼は結婚して 子供は何歳にな…

庄野潤三追悼

作家の庄野潤三さんが、先月に亡くなりました。当方は、庄野さんのあまり良い 読者といえませんが、このブログでもなんどか言及し、気になる作家の一人では ありました。 今回記するにあたって、拙ブログでの過去ログを検索してみましたが、一番最初に 登場…

書肆ユリイカの本4 

田中栞さんの「書肆ユリイカの本」のあとがきには次のようにあります。 「 本書は書肆ユリイカが出版した書物そのものについて検証した一冊である。 取り上げているのは書肆ユリイカの本だが、内容である詩や著者である詩人に ついてほとんどまったく語って…

書肆ユリイカの本3 

「書肆ユリイカの本」田中栞著を見ていましたら、「ユリイカの本を図書館で閲覧 する」という章がありました。 国立国会図書館、東京都立図書館、神奈川近代文学館、日本近代文学館に所蔵さ れている「書肆ユリイカ」の刊行物を調査したレポートでありますが…