セ・パ さよならプロ野球5

 ドイツ文学者で、文芸批評家の川村二郎さんは、「2008年2月7日朝、自宅居間で本
を読んだままの状態で発見されたという。長女(56)は『夜通し本を読む習慣だった。
急だったが、父らしい死だったのではないか』と話した。
 ちょっととっつきにくいが、いったん懐に入れば情が深い。頑固、孤高……そんな言
葉がぴったりだった。」と報道にありました。
 川村二郎さんについてのウィキペディアには、「1957年、篠田一士の誘いで丸谷才一
らの同人誌『秩序』に参加」とあります。篠田一士さんとは、都立大学首都大学
東京とは別な大学でしょうよ)でも同僚となるのですが、そういえば篠田さんも自宅
で亡くなっていたのが発見されたのですが、篠田さんと比べると長命ではありました
が、ともに自宅で亡くなって発見されたというのが不思議です。(篠田さんが亡く
なったのは、1989年4月13日でありまして、早いものであと数日で23年忌でしょうか)
 川村二郎さんの訃報報道にある「頑固、孤高」ということと、二十五年来のパリーグ
ファンというのは、どこかでつながるのでしょうか。
 本日に手にしていた川村二郎さんの「里見八犬伝」(岩波書店同時代ライブラリー)
のあとがきを見ていましたら、次のようにありました。
「明治以降の近代日本小説の世界で、誰を最も敬愛するかと問われれば、まず露伴
ついで鏡花、少し離れた場所で釈超空、こういった名前を挙げることにきまっている
し、これから変えようもないだろうと思う。」
 パリーグ一筋というのは、こういう小説家への偏愛につながる世界であります。
 こういう人が、ロッテの試合と選手について朝日新聞に寄せているのであります
からね。昨日に続いて、朝日新聞92年4月20日 夕刊からの引用です。
「 黙々と投げ続けるロッテの村田兆治投手の、孤独のシンボルともいうべき悲壮な
姿。池に投げられたコインのように、観客の数えられる外野スタンドに静かに吸いこま
れる、有藤選手や高沢選手のホームラン。剥げちょろけた外野の芝生に球を弾ませる、
愛甲選手の巧みな流し打ち。この球場で記憶に刻まれた貴重な映像の数々である。」
 村田投手だけは別格で、フルネームでの記されています。そのほかでは3人しか登場
しないのでありますが、高沢選手のホームランというのは、この時代にロッテに主砲
といわれる選手がいなくなったことによるものでしょうか。高沢選手は、パリーグ
首位打者になったのは88年のシーズンで、この渋い打者を川村二郎さんは好きだった
のであろうと思います。