セ・パ さよならプロ野球10

 昨日に引用しましたが、吉川良さんの小説の作中人物は「日本の国は、巨人が勝って
いた方がいいんですよ。いろんな職場で仕事が気分がよくはかどる。それが世の中の
あり方ですよ。」と発言しています。日本の高度成長期と巨人の黄金時代は重なるせい
もあって、巨人中心の野球世界秩序が崩れることを、日本の企業社会のリーダーたちも
おそれていたのかもしれません。リーグ戦、またはシリーズで巨人を倒すことは他
チームの共通の目的ではありますが、巨人の覇権を脅かすことは避けるというのが90年
代までの野球界でありましたろうか。
 こうした秩序が崩れるのは、新しい産業の担い手たちがプロ野球のチームのオーナー
となったことですが、そうした動きはパ・リーグから起こってきたことであります。
 主人公である敏男さんは「俺はどうみてもセ・リーグじゃないし、チームでいえば
ロッテだ。」というのですが、最近にこのくだりを読みましたら、どういうふうに感じ
るでしょうか。「ネアカとネクラ、ナウイとダサイ」とありましたが、最近の分け方で
ありましたら、「勝ち組と負け組」ということになるのでしょう。
 いまとなって、この小説を読みますと希望をもって生きていれば、負けが勝ちに転化
することもあるぞと読めなくもなしですが、もちろん、主人公は勝ち組になろうなんて
気持ちはなしです。 
 もうすこし、小説からの引用をしてみましょう。
「敏男は夕刻、川崎球場のスタンドの下でラーメンを食っていた。けっこう長い
カウンターに客は敏男だけで、ラーメン屋のおじさんとおばさんが、『さっぱり客が
なあ』と嘆いた。」
 客の少ない球場でありますから、出店している業者さんもたいへんであります。
当方が川崎球場へといったときも、スタンドでうどんを食べている人をみかけました
が、あれは別のお店が販売したものでありましょうか。

 うどんを食べていたのは、浴衣姿で野球を観戦しているお二人でありました。
一人は当時大関で、もひとりはおつきでしょうか。おつきのほうが何度か売店のほう
へといってうどんなどを買ってきていたようです。これは消化試合ではありますか、
客席に人はすくないことです。ゆかたの客は、ロッテ有藤さんとの関係で応援に
きていたもので、当方は、ロッテ高沢選手の激励応援で、試合前にグランドで一緒に
写真などをとらせてもらいました。古い話であります。