湯川書房・湯川成一の肖像5

 「仙台が親戚」様に書き込みをいただきましたが「湯川書房湯川成一の肖像」は、
伊東康雄さんがプロデュースで、編集実務を福永幸弘さんがなさったとのことです。
伊東さんは湯川本の熱心な蒐集家なのでしょう。福永さんは、印刷関係のお仕事を
なさっていたとうかがっておりますが、どちらも出版業界の方ではありません。
 今回の「湯川成一の肖像」に掲載されている「自作限定本について語る」を見まし
たら、次のようにありました。湯川さんは、学校を卒業したあと大阪の証券会社に
勤務していたのですが、お気に入りの小説「北の岬」をなんとか限定本としたくてと
いうのが前段にありです。

「ですけれど、うーん、全くの素人ですから印刷屋さんにどういう風にして頼みに
行けば判らないし、製本屋さんなどは全く知らないわけですから、手のつけようが
なくって、もうしょうがないと思って、そら、電話帳の職業欄で印刷屋さんも製本
屋さんにも、上から順番に掛けて行ったのですけれども、その時に驚いたのは、
かけてもかけても皆断られる。それは200部の本を作るというような事を引き受ける、
というような製本屋さんというようなのが、その時点ではなかったように思うんですね」

 美しい本をつくるのにこだわった湯川さんにも、このような時代があったのですね。
結局のところ「北の岬」については、どこで制作をしたのかはわかっておりませんが、
それから30年小出版社を続けるなかで印刷と製本は、いつからか会社がきまったので
あります。
 今回の「湯川書房湯川成一の肖像」は、印刷は創文社、製本は須川バインダリーと
こだわりの湯川さんが信頼していたところが担当されています。今回の部数は60部
ほどでありますので、ずいぶんとぜいたくなことです。
 このあと、「仮題 湯川さんとなかまたち」という本が企画されるとのことです
から、これが刊行されることを鶴首して待つことといたしましょう。