シベリア抑留5

 シベリア抑留から無事に生還したとしても、「心理的負荷による障害」に
陥った人が、相当にいらしたのでしょう。こうした方の数を把握することはできま
せんが、「仙台が親戚」様に記していただいたようjに香月泰男さん、石原吉郎さん
ともに、アルコール依存ではなかったかと思います。
 文学者では石原吉郎さん、長谷川四郎さん、高杉一郎さんとならべてみると、
高杉一郎さんだけが、際立って長命となります。長谷川四郎さんは脳梗塞となる
のですが、やはりお酒が好きな方であったようです。
 高杉一郎さんが亡くなってからご家族の手によって追悼文集が刊行されました。
これは一般にも頒布されて、当方はお願いをしてわけていただくことができました。
 これによりますと、次のようにあります。筆者は白井久也さん、元朝日新聞記者。
「 体験者にしか分からない『シベリア抑留』で、本物の地獄をみたあなたが、意を
決して取り組んだのは、一般にはあまり知られていませんが、日本人捕虜の権利を
回復する人権運動に強い共感を示して、精神的にも物質的にも支援を惜しまなかった
ことです。」
 高杉一郎さんは、これをみると立派すぎるのですが、白井さんの文章には、
「高杉さん、あなたはお酒が大好きで、かつまた食欲が旺盛な人でした。」とあり
ます。お酒が大好きで、長命であったところに高杉一郎さんのバランス感覚を
感じるものです。