何度か読んでいるはずだが

 先日に安価で求めた文庫本でありますが、これは元版が出た時に購入し、

文庫となった時にも購入しておりました。たぶん、その都度読んでいるはずで

ありますが、最初の版は1979年で、文庫化は1986年で、ずいぶん昔のこと

であります。それからも繰り返し読んでいるといいたいところですが、そんな

ことはなかったようで。

 今回安価で買った本を読むと、ほとんど内容を忘れていることもあって、

初めて読んだ時よりも面白く感じることです。紹介されている本によっては

こちらが年齢を重ねたことによって、興味がわくものもあるようです。

 ということで、種村季弘さんが紹介している文章を引用してみましょう。

「小説を読んでいて、百科辞典を引くようなことは滅多にない。しかしそのとき

だけは例外で、百科辞典の地名索引のところを一つ一つ当たってみた。

問題の文章というのは次のようなものである。

『この話に出て来る但馬市には河があって、庄川日野川が醒ヶ井平野を

流れて来て合する点に但馬市があった。』・・・

 あらためて手元にある平凡社百科辞典の『日本地図』の索引を当たって

みると、・・」

 種村季弘さんの「書物漫遊記」にある「わが闘争」という文章の冒頭です。

種村さんが、このエッセイで紹介している但馬市が話題になる小説は吉田

健一さんの「流れ」という短編でありました。

 1980年頃には、吉田健一さんの「交友録」とか「書架記」を読んでおりま

したが、小説までは手が廻っていませんでした。それに吉田さんの小説は

30代の若者が読んで楽しめるものではなかったですね。

 この本での種村さんの「流れ」についてのエッセイを読みますと、これは

なんとかして吉田健一さんの短編小説集を入手しなくてはとなります。

検索をしてみましたら、なんと、お誂え向きで昨年に中公文庫から、吉田さん

の「短編小説集成」が刊行となっていました。これはありがたいで、早速に

この中公文庫を確保することにです。

 吉田健一さんの短編小説、当方が年を重ねたことですこしはうまく読むこと

ができるようになってはいないかな。