湯川書房・湯川成一の肖像6

 本日も湯川成一さんの「自作限定本について語る」から話題をいただきです。
この講演で、湯川さんは「理想的な本」というのを、次のようにかたっています。
「理想的な本というのは、・・一体どういう事になるのかと言いましたら、私は
やはり読みやすくて、そうして綴じがしっかりしているような本が、一番優れて
いるんじゃないかと思うんです。・・・その本を手に取りまして、うーん何か
こう非常に親しみやすいというか、ある美的感覚にうたれるといいましょうかね。
そういう思いというのも、読みやすさの一つの要因だと思います。」
 理想的な本を「読みやすく」そして「綴じがしっかりしていて」「ある種の
美的感覚をもつ」なんて角度から考えたことがありませんでした。
読みやすさとか綴じがしっかりというのは、職人さんの力量でありますが、
「美的感覚にうたれる」というのは、本がオーラを発していることでありまして、
それこそオーラを閉じ込めるのはプロデューサーの役割であるようです。
「 最初の頃は、本が出来る頃は、私のところの女房などは、もう全然、私の
側に近寄らないというくらいに、本が仕上がると必ず不機嫌になる。それは、
もう頭の中で、本が出来てるんですけれども、仕上がってくるものとの、落差が
非常に激しいもんですから、落胆、落胆が非常に腹立たしいばかりの思いばかり
するわけです。」
 初期の湯川さんが依頼した製本師さんは、昨日に「仙台が親戚」様が記して
いただいた植田由松さんであるようです。
「 一つずつ製本師が手で綴るような製本の仕方があるんですが、一冊一冊
やはり念入りにもっとmおよかれという方法でつくるわけですから、かなり
頑丈なものが仕上がるわけです。・・ 
 やはり経済的な法則といいましょうか、そういうものがあって、そういう
もう一冊一冊ずつ手作りでやる製本師というものが、だんだんなくなってきま
して、私が今まで依頼していた人も、とうとう数ものを始めまして、今に
おそらくそういう製本師というものがなくなるんじゃないかと、非常にさびしい
思いをするんですけれど。」
 本の奥付けに、製本された方のお名前が掲載されているのは、湯川書房
限定本「雨の庭」ではじめて知ることができましたです。