シベリア抑留4

 香月泰男さんの大掛かりな展覧会を、数年前に見たことがあります。
シベリアシリーズがずらっとならんでいたのですが、この並べ順については、
いろいろとあるようです。
 昨日の「立花隆」さんの著書のあとがきには、次のようにあります。
(ついでのいえば、香月泰男さん名義ででた「私のシベリア」は、香月さんに
立花さんが取材をして書いたものだそうです。共著ともいえる一冊で、これに
を書く作業を通して、香月さんのシベリア体験を、立花さんも追体験したように
なっています。)
「 実は、シベリアシリーズの絵のならべ方について、『これで決まり』と
いえるような、並べ方の決定版はない。過去の展覧会、画集でも、すこしずつ
違いがある。基本的には、モチーフとされている題材の歴史的順序に従うのが
通例で、大きく場所の流れからいえば、・・・ということになる。あとはそれ
ぞれの場所での時間的な順序に従えばよいのだろうが、実はこれが必ずしも
一義的にさだまらない。」
 香月泰男さんの作品の並べ方については、香月さんが存命中に作成された
「シベリア画集」と企画された「シベリア・シリーズ」展(東京セントラル
美術館 72年)が「生前の意思にそった最後の画集、展覧会だから、基本的
にはその順序に従うのがいいのだろうが、両者にも微妙な違いがあるし、これは
シリーズが48点しかできていなかった時代のものだから、あとの9点をどう
ならべるかという問題がある。」
 立花さんは、深読みして香月さんの世界を、一番良くつたえるためのならべ
方はと記するのですが、どうも、小生がみた「死後30年記念展」の並べ方には
納得がいかないようであります。
「『日の出』『月の出』『渚』の三つの遺作は、本文で詳しく論じたように、
シベリアシリーズ全体の深い深い総括であるから、他の全てと切り離して最後に
置くのがふさわしいと思った。94年の没後20年記念展でも、そういう扱いに
なっている。今回の巡回展の構成でいちばん不満なのは、この三点の位置づけで
ある。やはりこの三つの遺作でシベリアシリーズをしめくくるのがいちばんいいと
思う。」
 当方は、一枚一枚の絵の重さに圧倒されて、並びまで考えも及びませんでしたが、
見巧者というのは、こういうことでありますかな。