小沢信男著作 185

 小沢信男さんと辻征夫さんのまじわりについて見ています。すこし材料が不足して
いるようで、うまくまわっていきませんです。
 辻さんという純度の高い詩人にとっての俳句への取り組みと、余白句会での俳句
指導と小沢さんの作品への評価というのがテーマということになるでしょうか。
 句会で一緒となった多田道太郎さんによる「おひるね歳時記」に、小沢さんの作品
はたくさん取り上げられているとか、小沢昭一さんの「俳句武者修行」にも登場する
ということをメモしておきましょう。
 小沢信男さんの「貨物船句集」に寄せた文章から引用です。
「(余白句会の)彼ら詩人各位はもとからの仲良し組らしいけれども、どうやら多年
の詩作の孤独に、疲れている風情がなくもなかった。その苦界を句会で多少癒そう。
ほとんどそれが第一の動機なんだろうが、さすがにそれだけでもない暗黙の気風がうか
がえた。強いて言葉にするならば、集団のなかで個を鍛える。現の証拠の成果が『俳諧
辻詩集』一巻だと、わたしはひそかに確信している。文芸とかぎらず芸能一般がほんら
いそういうものだろう。その点近代の文学は個人の営為を強調しすぎて、じつは内心
当惑しているのとちがうのか。」
 新日本文学にあって、「集団のなかで個を鍛える」をテーマに、共同制作を行って
きた小沢さんであります。この詩人とも連句からはいったというのは、句作よりも
より共同制作の色あいが強いからですね。辻さんは、これは難しかったので、普通の
句作にしてもらったとありますが、これは連句は約束ごとが多くて難しいということ
であって、個人が前面にでてこないからということではないでしょう。