小沢信男著作 188

 「EDI ARCHIV  亀山巌」1997年8月20日 エディトリアルデザイン研究所刊につい
ては、目次を転記して、さらっと終わらせようと思っておりましたが、手にして見ま
すとあちこちで手がとまることです。
 「EDI ARCHIV」版は、むかし図書館で手にした岩波文庫図書館本(またはほるぷが
配本した文庫本)のように、文庫サイズではありますがハードカバー仕立てです。
製本は須川製本所ですので、ちいさいけれどもぜいたくなつくりです。(さすがにEDI
の刊行物です。)
 小沢さんは、この本に「昨日少年録 1 亀山巌」と名付けています。
「昨日少年」というのは、小沢さんの俳句「蜩や昨日少年今日白頭」からとられていま
す。この本には、この俳句が短冊化されてはさみこまれていました。(そういえば、
「昨日少年」というのは、「一枚の紙の裏表に刷って四つに畳んだ小句集」の表題と
なっているのでした。)
「昨日少年録 1」とあるということは、2も3にもつながる可能性があったということ
でしょうか。
 この本のあとがきには、次のようにありました。
「老後も初体験で、年々に新境地へ突入する恍惚と不安があるのだけれども。あいにく
なのは先輩各位が順に先に亡くなるのですね。少年のころは卓越した先輩たちが綺羅星
のごとく、なんとこの世はすばらしく豊かなところと、愚直に信じていたふしがあり、
そこでその星がパッと消えると、そのぶん世界がさびしくなります。パッパッパッと
だいぶ消えて、もうよほどつまらなくなった。と思うと、じつにつまらない。
 せめて彼らの仕事や軌跡は、定期預金のように継続して生きていると考えたい。
 というわけで、ここに提出いたしますものは、私の<通帳・亀山巌>であります。
 ・・・・
 さて、このあとは<通帳・長谷川四郎>とか<通帳・花田清輝>とか、・・とかを
順に組んでゆくのを、老境の楽しみとしようかなぁ。」
 長谷川四郎さんについては、みすずの大人の本棚を編集し、河出から生誕100年記念
出版「KAWADE道の手帖 長谷川四郎 時空を超えた自由人」を刊行し、花田清輝さんに
ついては、「大活字版ザ・花田清輝二冊本全集」に長文の評論を寄せていました。
 みすず書房からの「通り過ぎた人々」もあわせて、<定期預金通帳>ととらえるか、
「昨日少年録」の連作としてとらえるかです。