本日はパンつくりの一日でありました。仕込みは前日夜にすませておいて、夜通し
発酵させて、午前に成形して焼き上げるという目論見でありましたが、今回のりんご
酵母による種は、朝になってもあまりふくらんでいなくて(温度が低いからでありま
しょう)、それから再度30度のオーブンに入れて発酵させるということになりました。
結局のところ、ずいぶんと時間がかかりです。これが自家製天然酵母の楽しさであり
ますか。自分で手をかけて作ったものは、どんなにまずくとも食するのです。
その作業をしながら、本日には何冊かの本を手にとってつまみ読みをしておりまし
た。
つまみ読みに、ほんとぴったりの一冊というのは、岡本綺堂「ランプの下にて」で
あります。ほとんど歌舞伎を見る機会はないのでありますが、岡本綺堂が見た明治の
歌舞伎も、現代も役者の名前だけは同じで、これが親近感がわくことです。
「団十郎の模様がよくないということは、これまで新聞紙上にも伝えられて、世間で
もみな知っていた。わたしたちはむろん承知していた。今度こそ再び起つことは覚束
ないという情報をも握っていた。それだけに今日のあやめの話がいよいよ胸にこたえ
て、堀越もいよいよいけないのかという嘆息まじりの会話が諸人のあいだに好感され
た。」
ここに書かれている団十郎は九代目でありまして、亡くなったのは明治36年で、
66歳だそうです。5年ほど前に亡くなった団十郎は十二代目で、そろそろ十三代目が
誕生すると、もっぱらの話です。
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