片付けをすることは

 当方の場合に片づけというのは、ほとんど印刷物を右から左にやるということ

でありまして、捨てるということが入ってこなければ、基本的な片付けにはなら

ないのでありますね。

 むしろ本などは片付けるたびに、どこにいったかわからなくなることで、あち

こちに未読のものが散らばってしまうことにです。片付けのたびに、あれも、こ

れも読んでいないという思いになることで、これじゃいかんと、何冊か手近に

持ってくることにです。 

 今回の片付けで、これは読まなくてはと思ったのは、文弘樹さんの「こんな本

をつくってきた」(編集グループ SURE)でありました。興味のある内容であり

ますし、気心の知れた文弘樹さん(図書出版クレイン代表)と黒川創さんのやり

とりでありますから読みやすいし、これならすぐに読めると思って、一年が過ぎた

ようです。

 このお二人は、京都の桃山高校の同学年で、入学式で出会って意気投合し、学校

をさぼって麻雀店に出入りした仲だそうです。その後紆余曲折があって同志社

卒業し、東京にでて「思想の科学編集部」で一緒になるという、まさに腐れ縁で

すね。

 もともと高校ではみ出した人たちでありますので、その行動などが面白いことで

あります。当方よりも10歳ほど年少でありますので、当方が学校を終えて北海道

に仕事を得た時には、お二人は中学生とのことでありました。

 黒川さんの発言からです。

「ぼくが大学一年で、文さんは高校二年で留年しているから、高校四年目のころ。

君がよくうちに来て、『お前、なんで金大中の救援運動とかやってるんや』って、

聞いてくるわけ。光州事件(1980年5月)の直後で、ぼくはそのころ、韓国に

行って、むこうの刑務所を差し入れに回ったりしてた。在日朝鮮人の祖国留学生で、

政治犯として捕まっている人たちがおおぜいいたから。」

 今からたった四十年ほど前でありますが、大韓民国はいまとはまったく違った国

の雰囲気でありました。当方の大学の同級生も韓国で拘束されたのですが、その

代表的な存在が、徐兄弟でした。

 その時代のことを思うと、ほんと隔世の感であります。

 黒川創さんといいますと、最近手にしたちくま新書「戦後史講義」に文章を

寄せていました。「思想の科学」についてでありました。