朝から四方田

 本日の朝日新聞朝刊に四方田犬彦さんの寄稿文がありです。10月8日に亡くなっ

白土三平さんを悼んでのものです。

 当方はコミックにはなじむことができずで、白土三平さんの代表作「カムイ伝

はまったく読んだことがありません。「ガロ」や「COM」は手にしたことはある

のですが、それを継続して読むということもなかったようです。すこし見たのは、

手塚治虫さんの「火の鳥」くらいでしょうか。

 当方よりもいくつか若い友人と話をしましたら、あの傑作「カムイ伝」を読んで

いないというのは、同時代人として信じられないといわれてしまいました。

 そのようにいわれてもしょうがないのでありますが、そのような当方が読んでも

本日の「白土三平さんを悼む」という四方田さんの文章は、尊敬の念に溢れていて

いい文章でありました。

 そういえば、当方は未読でありますが四方田さんには「白土三平論」という

著作があるのでした。

 この悼む文章で、四方田さんは終始、白土三平先生と呼び、その四日後に

亡くなった実弟で作画を担当された岡本鉄二さんのことも先生と呼んでいます。

先生という尊称をつけて呼ぶというのは、なかなかしっくりとこないことがあ

るのですが、この四方田さんの文章では、すんなりと受け入れることができま

した。

 短い文章でありますので、全文を紹介してみたいと思ったりですが、それは

できませんので、印象的なところのみを引用です。

「わたしは評判の高いこの二作(カムイ伝忍者武芸帳)より、70年代以降に

執筆された『神話伝説シリーズ』の方に、作者の思想的深まりを見ている。

もはや歴史が一元的に進歩発展するといった『大きな物語』の時代は過ぎた。

より根源的なところで人間を動かしているのは歴史でも政治的イデオロギー

もなく、古代から語り継がれてきた神話であり、民間伝承である。白土先生は

この認識に基づいて、ウエーバーのカリスマ論からレヴィ=ストロースの王権論

までを理論的に渉猟し、政治権力が発生する始原について発表された。」

 まったく白土三平さんの世界を知らない、当方は勉強になることであります。

これを読んでみると、このようなことは山口昌男さんが書いていても不思議で

はないなと思って、彼の本をあたってみることにしましょう。