本日に届いた「本の雑誌」10月号を見ていて、一番うけたのは巻頭の特集
「人には本屋が必要だ!」でも、坪内祐三さんのエッセイでもなくて、目次ページ
の下のほうにひっそりとある「双子日記」という沢野ひとしさんの孫バカぶりを
描いた文章でした。
沢野さんは、息子さん家族と長野県川上村へと夏の旅行にいったときのこと
を書いていますが、そのときの孫娘(三才)さんとのやりとりのついでに、孫さんの
名前を記しているのですね。その孫娘さんの名前が、当方の身内の名前と一緒
であるのです。そんなによく眼にする名前ではないだけにいっそうのこと、このと
ころに反応してしまいました。(漢字での表記はことなるのですが、音が同じ)
「本の雑誌」の創業メンバーで椎名さんと、沢野さんはわりと家族のことを話題
とするようでありますが、いよいよ話題は孫のことになってくるかです。
もちろん、これは家族の同意があって話題にできるわけで、椎名さんが息子さん
をモデルに作品を書いているときも、息子さんは書かれることに同意したとのこと
ですが、娘さんのほうは絶対に書かないでねといったとのことですから。
若い頃に読んで影響を受けた人の文章に次のくだりがありました。
「私は自分の子供のことをあんまり語りたくありません。既にこんなことを少し書いた
だけでも、もう嫌気がさして今までのところをすっかり破りすてたいくらいです。
人前で私事を語るのは、私のいちばん気の進まぬことだからです。」
これはいつ書かれた文章であったろうかと、手にしている文庫本をみましたが、
そこには初出が表記されていませんので、ちょっと他の刊本で確認です。
1938(昭和13)年の婦人公論に発表されたものでした。タイトルは「父と息子の
対話」、筆者は林達夫さんで、この時42歳でありますね。
林達夫さんは、家族についてあまり書くことがなかっただけに、「三木清の思い
出」で描かれる妹さんのスケッチは印象に残るのであります。
どちらの文章も平凡社のセレクションで読むことができます。