本日の午前はトレーニングで、午後からはウトウトとしながら本を読んで
おりました。このところメインで読んでいるのは、シルヴィア・ビーチの
「シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店」となります。(早いところ読んでしま
わなくては、他に待機しているものに影響がでるのですが)
パリにあったシルヴィア・ビーチによる英語本の書店で貸本屋さんでありま
すが、ここにも多くの文化人が集まって、パリの名所の一つになりました。
ここに集まった人で一番有名になったのは、やはりジェイムス・ジョイスなので
しょうね。
ジョイスといえば、丸谷才一さんにとっては特別な作家さんであることもあり、
丸谷さんのファンにとっては、一度は読んでおきたい作家であります。そんなこと
もあって、ずいぶんと昔に河出書房からでていたグリーン版という文学全集で、
ジョイスの「ユリシーズ」を買っているのでした。これが読むことができていない
のですね。ジョイスは、「ユリシーズ」だけでなく、その前から文庫となっている
のも含めて、まったくだめであります。
今回のシルヴィア・ビーチさんの作品には、ジョイス「ユリシーズ」を刊行する
くだりがありまして、やはりこういう出版をめぐる話は、興味深くて面白いことで
す。
「ユリシーズ」はもちろん英語で書かれた小説でありますが、内容に問題あり
ということで、出版の引き受けてがなくて、フランスでシルヴィア・ピーチが版元
を引き受けることになったのですが、苦労してやっとこさ出版にこぎつけるの
ですが、米国、英国では禁書扱いで税関で足止めを食らうことになりです。
もともと、部数は千部限定ですし、想定によって三段階の造本となるということ
で、趣味的に本と受け止められたようです。
「ユリシーズ」が出た時には、この作品の好色的なところにスポットがあたって、
それが目的で、後になってからこの小説を求めたい、または同じように自分の
作品を刊行してもらいたいという申し出が、シルヴィア・ビーチのところに寄せら
れたとあります。
「『ユリシーズ』が成功を収めた後、私が好色文学を専門に出版しようとしている
と勝手に想像して多くの作家たちがシェイクスピア・アンド・カンパニイ書店に
群がってきました。彼らは彼らの好色文学の労作を私のところに持ち込んで来ま
した。しかも、それだけではありません。彼らは彼らは、自分たちが勝手に想像し
た私の趣味からすれば、きっと気に入るに違いないと考えている一節を私に朗読
すると言ってきかないのです。」
それにしても、難解な小説という感じの「ユリシーズ」が同時代において、一方
においては好色文学として発禁となり、もう片方では文学の目利きによってすぐ
に傑作との評価を受けるのでありますからして、世界はひろいことです。
それでもビーチさんは、次のようにも書いています。
「私が止むなく断らなくてはならなかった次の本は『チャタレイ夫人の恋人』で
した。私はこの作品をそれほど評価していませんでしたし、この著者の作品のな
かでも最も面白くない作品だと考えていました。しかし、ローレンスがこの作品の
救済を訴えてきたのを断わるのはとても辛いことでした。」
英語圏では禁書になっているものをフランスで刊行し、逆に本国へと送りこも
うということですが、現代では考えられないくらい厳しいことでした。

