よくわかります

 新刊を購入して、まえがきとごく一部を読んだだけで、よくわかりますと

記しておりますので、これは書かれている内容が理解できたということでは

なくて、この本を書こうとした動機がよくわかりましたということになります。

 本日に手にした新刊でありますが大島幹雄さんの「日本の道化師」平凡社

書であります。行きつけの店に平凡社新書の新刊が入らなくなったようで、入

手するのに時間がかかってしまいました。

 大島幹雄さんの本は、このところずっと購入していますし、先月にも「図書」

に掲載の文章を話題にしておりました。

 まえがきを見てよくわかりますと記したのは、ここであがっている大島さん

をクラウンの世界に引きずりこんだ人は「尾崎宏次」さん、そして「久保覚

さんとあって、「尾崎宏次」さんからは「自分がサーカス研究をするにいたっ

たのは林達夫さんのけしかけ」という話があったと紹介されています。

 大島さんの本では、「道化の時代」との章がありまして、そこには「山口昌男

が火をつけた道化ブーム」とありますので、これで役者がそろうことになりです。

林達夫、尾崎宏次、山口昌男久保覚という流れでありまして、これにつけくわ

えるとしたら芦原英了という名前でしょうか。

 大島さんは、当方とほぼ同年代ということもありまして、同じような時代に同じ

本を手にしていたようで、当方もこれに刺激を受けておりました。

 尾崎宏次さんといえば、最近ではほとんど名前を聞くこともなくなりましたが、

演劇評論家といわれた人でして、活動は新劇といわれた芝居の評が中心でした。 

当方は、尾崎さんの書いたものはほとんど読んだことがなくて、すぐにでてくる

文章は、著作集の月報に寄せたものでありました。(尾崎さんの書いた内容は

忘れているのに、それが月報にあったことは忘れていない。ちなみにこの著作集

は月報があるとないとでは価値がまるで違いますので、6冊セットで購入のときは、

必ず月報がついているものにしましょうです。)

 尾崎宏次さんが寄せていたのは、林達夫著作集の月報「研究ノート6」1972年

にでありまして「林さんのサジェスチョン」という題です。これをとびとびで引用

です。

「用件をすましてしまうと、林さんは、ところで、君ね、と言ってから、演劇の全

歴史を道化役を中心にして視る必要があるという話をされて、そのサジェスチョン

に私は眼のさめるような思いがした。だから、林さんは、山口昌男氏の仕事をはやく

から認めていた。・・・

 私が直接林さんの示唆で手がけた仕事がひとつだけある。それはサーカスを調べ

ることであった。平凡社の『世界大百科事典』がでるときで、私は厚いイギリス本

を読み、それから日本の曲馬団の歴史をしらべた。」

 このようなことを頭において、大島幹雄さんの「日本の道化師」のまえがきを立ち

見してほしいものです。