夏休みも終わり

 しばらく本屋(新刊も中古本屋も)へといっておりません。そろそろ禁断症状がで
てきそうであります。そんなところに友人から、今月の「文藝春秋」はお得感がある
よと連絡がありました。芥川賞の受賞作品が掲載されているほか、孫に読ませたい本
というアンケートなどもあるからだそうです。
 芥川賞が掲載された「文藝春秋」など、久しく購入したことがなかったのに、今年
の三月特別号を買って作品を読みましたら、まずまずでありましたので、次の受賞作
も読んでもいいかなという気分になりました。とはいうものの、このところ図書館か
ら借りている本を読むのに苦戦していることもあり、買ってもすぐに読むわけには
いかないのですね。だからといって雑誌の場合は、ある時点までに買っておかなくて
は、入手が難しくなりますからして。
 とにかく近日中に本屋へといって見ることにしましょう。
 そういうところに注文してあった本が届きました。もちろんネット通販ではなく、
アナログ通販であります。

 編集グループSUREの新刊 鶴見俊輔さんの「敗北力 増補版」となります。8月に
できたばかりのほやほや本です。増補版ということは、元版があるということですが、
当方は元版は購入していないようであります。
 鶴見さん最晩年の仕事から自選も含めての一冊です。初出で眼にしたものもありま
すし、他著書に収録されて読んだものもあるようですが、当方も読んだ片端から忘れ
るのでありまして、ほとんど初めて読むような感じであります。
 まずは、この版で増補された「戦後の思い出から 田村義也のこと」を読むことに
しました。
 書き出しは、次のとおりです。
「敗戦後の混乱の中に、心の方向の似たものをさがしあてることは、むずかしかった。
 私にとって、戦争中に、そういうことはほとんどなく、戦争にさからう心の向きを
守ることに精いっぱいだった。」
 心の方向の似たものとして、戦後に鶴見さんは田村義也さんと出会うことになりま
す。田村さんについてのくだりからです。
田村義也は名前の示すとおり、キリスト教の家庭に育ち、その強い正義感は生涯を
貫いた。戦争の記憶は彼の中にあり、朝鮮と沖縄にかかわる主題をもつ本をもちこま
れると、必ず引き受けた。主題への関心が、彼の仕事に輝きをもたらした。」
 この文章は、2008年に武蔵野美術大学で行われた田村義也展の図録に寄せた文章と
なりです。この展示に足を運ばなかったのは、かえすがえすも残念でありましたが、
これの図録くらい確保するのであったと、今頃になって思うことで。(それにしても
どうして、この図録を入手しようとしなかったのか、まったく不思議なことです。)