本の雑誌 3月号 2

 先日まで話題にしていた「しんとく問答」の装丁は田村義也さんでありましたが、
本の雑誌」3月号の冒頭コラムにも田村義也さんの名前は登場しますので、ここの
つながりのキーは田村義也さんであったのですね。
 おかげで久しぶりで「田村義也 編集現場115人の回想」を手にすることになりま
した。
 とはいうものの、「本の雑誌」の特集のなかに田村義也さんの名前は見当たらない
ようであります。田村さんが装丁する本というのは、あまり「本の雑誌」読者には
なじみがないかもしれません。
 「造本・装丁は楽しい!」特集のトップには「デザインは演出力だ!」という対談
がありまして平野甲賀さんと日下潤一さん、鳥海修さんによる対談がありますが、
これを見ていたら、次のくだりがありました。
 発言しているのは日下潤一さんであります。
「ほら。こんなことは言いたくないんだけど、そういう知識とか教養がないとデザイン
はできないわけ。・・・守らなきゃいけない部分は守れと。デザインするときにここ
は守れというところを守っていくと整頓されてくるんですよ。平野さんの展覧会を見て
いると、僕らはああいうものを見て育ったから、自分の中にあるし恵まれてると思う
わけ。杉浦さんもいたしね。杉浦さんなんか、今、誰も気にしていないでしょ。
だから講談社現代新書があんなもんになってしまう。尊敬もなにもないもん。
杉浦さんの現代新書は全部違うんですよ。」
 杉浦さんというのは、もちろん杉浦康平さんのことですが、その昔とくらべると、
杉浦さんがデザインしたものを見なくなっています。これはさびしいことです。
「今、誰も気にしていないでしょ。」というのは、さらにショックであります。
 ブックオフなどにいくと講談社現代新書がならぶ105円棚の前で、物色をするの
でありますが、デザインはきわめてすぐれているのに、なぜかあまり欲しいと思える 
ものがなくて、あまり杉浦デザイン時代の現代新書は増えていきません。
 最近手にしていた現代新書は、後藤明生さんの「小説 いかに読み、いかに書くか」
でありました

小説―いかに読み、いかに書くか (講談社現代新書 (684))

小説―いかに読み、いかに書くか (講談社現代新書 (684))

 講談社現代新書のデザインは、こうでなくては。