今年に入手した(読んで良かったというものではないかも)本で、一番の収穫は何で
あるかなであります。
先日に手にしていた本の、次のくだりを参考にです。
「読書は、秘密結社員みたいにこっそりするものだ。私は推薦図書は書かない。書店で
手に取った時に、まるで自分をまちかねていかたのような感じがする本が『あなたの本』
だ。立ち読みして文章が眼に飛び込んでくるようだと、絶対に買いだ。自分の財布を痛め
て買う。図書館の本はすぐ期限がくる。借りた本は読もう読もうと思っているうちに時間
が経って返し辛くなる。もらった本は真剣に読まないかも。」
上に引用したのは、中井久夫さんの「秘密結社員みたいに、こっそり」というもので、
筑摩書房の「二十一世紀に希望を持つための読書案内」という本に寄稿したものとありま
す。
中井さんの「時のしずく」に収録されているのですが、「読書案内」というのに、具体
的な書名をあげるのではなく、書店で立ち見をして、強く感じるところがあったら、身銭
を切って購入し、それを読むべしという話であります。このようにして書物渉猟者として
のスキルを上げることが一番ということですか。
中井さんは、学生の時代の図書館での幸せな書物との出会いについても、書いてはいる
のですが、ここは書店での本との出会いということで。
当方が、これまでの何十年かの間に、店頭で「まるで自分をまちかねていかたのような
感じがする本」と出会ったことって、何回あったでありましょう。あまり有名でない版元
からのもので、未知の著者によるものであります。
そのような数少ないものに、佐高信さんの「斬人斬書」(島津書房版)、白上謙一さん
の「現代の青春におくる挑発的読書論」(昭和出版版)がありです。どちらも三十年以上
も昔のもので、ともにその後文庫になっているのですが、こういうものと店頭で出会うこ
とができたというのは、ラッキーなことでありました。
いつも書店では、このようなラッキーな出会いができないかと思っているのですが、最
近は、本を引き寄せる(または本に引っ張られる)力が弱くなっていて、大当たりどころ
か小当たりもなくなっている、ここのところです。
今年は本当に小さなものではありますが、当たりがありました。それが次のもの。
- 作者: 上明戸聡
- 出版社/メーカー: 鉄人社
- 発売日: 2017/07/13
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す。行きつけの書店の文庫棚のあれこれわけのわからない文庫のなかに、この一冊があり
ました。商人宿という言葉のひびきが好きでありまして、ビジネスホテルではなく、商人
宿というのは、ほとんどがレトロな建物で、こういうところに泊まってみたいなと思うの
です。
この文庫の帯には、「ボロ」というのは、褒め言葉ですとありますが、古い商人宿には
文化財のような建物もあることから、これからこれに人気がでるのではないでしょうか。
小学館文庫の「秘境駅」とか「命がけ温泉」などが、最近TVで話題となっています
が、何年かすれば「ボロ宿」もTVで取り上げられる可能性ありですね。