読書は苦戦中

 このところ、あれこれとやらなくてはいけないことや、誘惑が多いせいもあって、
読書は苦戦をしています。こういうときには、もうすこしページを稼ぐことができる
ものを選べばよろしいのですが、手にしているのはトーマス・マンの「ブッデン
ブローク家の人々」でありますので、なかなか調子がつかめません。
もうすこしがりっと読まなくてはいけませんです。岩波文庫ですから、元々はいつ頃
の翻訳になるのでしょう。最近の翻訳でありましたら、もうすこし読みやすくなって
いるでしょうね。登場人物の整理なども、自分でしなくてはいけないので、昔であれ
ばそれが普通ですが、最近は登場人物一覧などがなきゃといわれるでしょう。
 ということで、いまだ上巻の200ページ手前をうろうろとしています。
 昔にでた小説の改版ということになりますと、今月の新刊に辻邦生さんの「背教者
ユリアヌス」がありましたです。この作品は、長篇であるせいもあって読むことがで
きる版本が少なく、元版と新潮社全集本と中公文庫版くらいしかないはずであります。
 元版はずいぶんと売れたものですから、割合と入手がしやすいはずですが、ねころん
で読むのは、ちょっとたいへん。それで中公文庫が重宝されました。その昔の文庫本で
ありますので、文字が小さく、そこそこのボリュームですから、なかなか最近の人には
手が出しにくいかもしれません。
 それで中公文庫は、これまでのを改版して、装いをあらたに再文庫化です。旧版が
上中下の三分冊であったのを、四冊に分けて、文字を大きくして、各巻に解説をつけ、
作者のノートもつけるという新しい読者を意識したつくりとなっています。

 これを歓迎するのは、元版でこの作品のファンになった当方と同世代の人たちであり
ましょうか。読み返してみたいけども、古い版本ではちょっと辛いという人には、大活
字(というほどではないが)本を喜ぶでありましょう。
 まあ一番のネックは価格が高いことでありまして、その昔に京都河原町にあった京都
書院で、この本をみつけて、持ち合わせがなく、同行の友人から金を借りて購入した
元版(たしか1950円)と比べると、割高感を感じるのはどうしてでありましょう。
 そういえば、辻邦生トーマス・マン「ブッデンブローク家の人々」などは大好きで
あったはずだよなと思いながら、本日の話題でありました。