一身にして二生を

 細見和之さんというと、先輩詩人の金時鐘さんについての本を書いています。

ディアスポラを生きる詩人 金時鐘

ディアスポラを生きる詩人 金時鐘

 いまだに読むにはいたっていませんが、もちろんこれは大阪文学学校のつながりで
あります。これはそのうちに読みましょうと思っているのですが、その前に金時鐘
んのものを手にしなくてはです。
 一昨年に金時鐘さんの代表的な詩集「猪飼野詩集」が岩波現代文庫にはいりました。
猪飼野詩集 (岩波現代文庫)

猪飼野詩集 (岩波現代文庫)

 これに続いて、岩波「図書」での連載がまとまって岩波新書に入りました。 金時鐘さんは、坪内祐三さんの「四百字十一枚」で知った「一身にして二生を経る」
世代の人であります。以前に拙ブログでも、坪内さんの本から以下の部分を引用して
いますが、そこには、次のようにありました。
小沢信男さんとほぼ同世代の作家(「大正末から昭和初めに生まれた人々、色川
武大、開高健吉行淳之介山口瞳中井英夫など)について、「彼らは、太平洋
戦争の戦前戦後という明治維新に匹敵する大きな時代変化の中で、自我形成して
いった。まさに『一身にして二生を経る』である。そこに実は、文章家としての彼ら
の魅力が隠されている。」
 上に名前があがっている人で小沢信男さんのほかは、皆亡くなってしまっています
が、小沢さん1927年生まれ、そして金時鐘さんは1929年生まれですから、ほぼ同世代
となります。
 小沢さんは東京で生まれ育ち、金さんは大日本帝国に併合されていた朝鮮の済州島
で生まれ育ちました。( そういえば、今年に88歳となられる小沢信男さんは、
「みすず」の表紙裏の連載のほか、芸術新聞社のホームページに「私のつづり方」と
いう連載をされています。すごいことです。
  http://www.gei-shin.co.jp/comunity/30/index.html  )