昨日買った本 7

 「昨日買った本」ということで「Switch」の特集を話題として、一週間であります。
93年というのは、丸谷さんは大御所になりかけでありましたが、いまだ文壇天皇とは
なっていなかったようであります。
 ちなみに芸術院会員となったのは1998年、文化功労者となったのは2006年でありま
した。
 この特集には、湯川豊さんが構成した「丸谷才一文庫」というページがあるのですが、
ここでは代表的な著作が紹介され、年譜が掲載されています。このところのリード文は
どなたが書いているのでしょうか、次のようにあります。
丸谷才一の本を並べてみると、にぎやかな知のさざめきが聞こえてくる。
小説に評論に書評に翻訳。エッセイに対談に歌仙にパロディ。
いずれも実生活の役に立つ教養が散りばめられ、人生を景気づける精神がみなぎって
いる。
 やっかいでややこしい現実とうまく付き合うには、ときどきは知性で遊ぶ心のゆとり
が一番。メモを取りながらの熟読もいいけれど、立ち読みや拾い読み的をしたって、別に
礼を失することにはならない。特製のゴシップ的年譜と研究用にはちと不向きな著作リス
トは、丸谷才一の著作全体をみわたす、おおまかな見取り図という見立て。丸谷才一
世界で遊ぶときのささやかな役に立つはずだ。」
「特製のゴシップ的年譜」というのが、楽しそうではないですか。このような試みは、
このあとどうなったのでしょう。たとえば、次のようにありです。
「四十歳で大学をやめた。翌年、長編『笹まくら』を脱稿、刊行していることから、背水
の陣で小説を書こうとしたのだと推測される。しかし、生活の当てはなかった。八月末、
夫人に『今月の収入は?』ときいたら、『五千円』という返事。これは古本屋が来て置い
ていった金だった。なんとか収入を考えなければ、と苦慮していたら、九月に旧知の丸元
淑生さんが『週刊女性』の編集長となった。渡りに舟。そこに軽エッセイ『女性対男性』
の連載をはじめた。後に丸谷さんの著作のなかでも特に多くの読者をもつ軽妙なエッセイ
は、これが起源と考えてよさそうである。」
 たぶん、湯川さんの手になるものなのでしょう。こういうゴシップで彩られた丸谷さん
の本格的な年譜を見てみたいものです。
 そういえば、丸谷全集の年譜をいまだに見るにいたっていないのですが、その作成は
武藤康史さんでした。湯川さんのご指名であろうとおもわれますがどのようなものを
おつくりになったのでしょう。