図書館へといった時に、「武井武雄 幻想の世界にようこそ」という本が
目に入りました。ほとんどなじみのない武井武雄さんでありますが、今年は
生誕130年ということで、大規模な回顧展が開催され、それの図録として
作成されたものであることがわかりました。
武井武雄さんの出身地である岡谷市にあるコレクションを中心としての
移動展となっていたとのことです。最初が目黒区立、次が石川県立で、
最後が愛知一宮の美術館だそうです。
こうのをやっていたのを、この図録を手にするまで、知りませんでした。
ちょっとの間ではありましたが、目黒区民でありました当方には、区立美術館
はなつかしい施設であります。(ちょうど開館した年に、区の教育美術展が
ありまして、見物へと行きました。)
当方のところにある武井武雄のものといったら、中公文庫からでている「本と
その世界」くらいでありまして、画集とか愛書家垂涎の刊本作品にはまったくの
不案内であり。
そんなこともあって、この図録でひととおり目にすることができるのはありがたし
です。特に刊本作品をすこしまとめて紹介されているのが。
その昔は、安価な刊本作品を買ってみようかと思ったこともあるのですが、これは
まるでそんなもの買ってどうするのであります。
一冊ごとに趣向をこらした本でありまして、工芸品のようなもので、会員限定で
の配布となっていて、その昔は、めったに市場にでないものでありました。
1967年の刊本NO74「笛を吹く城」については、次のように書かれています。
「ゴブラン織りに挑戦した本である。ゴブラン織りとは、画を染めた布地を糸にし
て再び元の様に織りなおす技法である。15世紀フランスで誕生した。日本では
祇園祭の山鉾に使われていることが知られている。
この本の場合は樹脂を混ぜたSベランという紙を使用している。これに絵を
印刷した後、更に細かい糸状に割いて横糸とし、絹糸を縦糸として織りあげてい
る。少々のズレが美しくやわらかな線を描きだす、と武井は述べているが、織る際
に絵が大きくずれることは鑑賞に堪えない。そのため、この種の手織りができる
京都西陣織のベテラン二人が約半年かけて織った。その後の製本作業の時間を
含めて300冊を制作し、頒布するまで2年の歳月を要したのである。値段も、
全刊行本作品の中で一番高価なものとなった。」
ものすごいこだわりで作られた刊本作品でありまして、こういう世界は近寄らな
いほうが精神衛生にはよろしかったか。