なんともいやな気分に

 本日のお昼前にあった出来事のために、報道関係は騒然でありまして、それを

避けて平静を保つのに苦労することであります。こういう時こそ、すこし静かに

いつもどおりに過ごせるように配慮して貰えればいいのにです。社会全体がはしゃ

ぎすぎであるのかもしれません。

 こういう報道を見て、さらに落ち込む人もいるでしょうに。

 そんなわけで本日は、思いっきり時局から離れた本を手にすることにです。

先日にブックオフへと立ち寄ったときに、購入した一冊です。

「数年前まで、自分が日本を去るまで、水の深川は久しい間、あらゆる自分の

趣味、恍惚、悲しみ、悦びの感激を満足させてくれた処であった。電車はまだ

布設されていなかったが既にその頃から、東京市街の美観は散々に破壊さえて

いた中で、河を越した彼の場末の一劃ばかりがわずかに淋しく悲しい裏町の眺

望の中に、衰残と零落とのいい尽し得ぬ純粋一致の調和の美を味わしてくれた

のである。」

 荷風の「深川の唄」からの引用でありますが、時代への違和感を抱き続けた

荷風でありまして、江戸から続く東京はどんどんと変貌をとげてしまい、河を

こえて深川まで足をのばすと、なつかしい調和の美を味わうことができたので

ありますね。

 この時代にも荷風のように、現代に背を向けて生きている人はいるのであり

まして、もちろん本日はTVの電源を落として暮らしているのでしょう。