古い「図書」から 2

 古い「図書」ということで、保管してあった50年ほど前の「図書」をながめていま
す。これは「図書」10月号 特集800号記念に触発されたものです。
「図書」800号記念号の冒頭には、池澤夏樹さんと斎藤美奈子さんの対談がおかれてい
ます。この対談では、池澤さんが「この対談を載せる時、昔の号の目次を載せたらどう
かな?年寄り向けかもしれないけれども、『へえ、こんな偉い人が・・・』というよう
な。」と発言していて、1965年1月号目次が掲載されています。
 1月号ということだからでしょうか、この目次にのっているのは、貝塚茂樹、中野好
夫、大塚久雄小川環樹湯川秀樹、時実利彦そのほかの人が寄稿しています。
貝塚、小川、湯川」といえば秀才三兄弟ではありませんか。年寄り(?)の仲間で
ある当方は、こういう時代があったなと思うことでした。
 1965年12月の「図書」は「漱石特集号」とあります。

 この「図書」の最後のところに「漱石全集」の刊行を伝える広告がありました。
「1965年12月9日は漱石没後50年に当る。そして来年1月5日は漱石が生まれてから百
年である。この記念すべきときにあたって、岩波書店では『漱石全集』を新たに刊行
することになった。
漱石全集』は小宮豊隆氏の指導のもとにすでに七回刊行されており、回を重ねるごと
に完璧に近づいている。断簡零墨をも余さず収録したこの全集は、個人全集の規範とし
て識者の賞讃を得ている。今回全く新しく版をおこし、後世に遺すに足る全集を提供し
ようとする。」
 「漱石全集」の定番であります菊版全集 全十六巻であります。当時の定価1200円と
いうのは、岩波新書が150円の時ですから8冊分くらいにあたります。現在ですと6000
円くらいの感じでしょうか。(これも今のほうがずっとやすくたたき売られていま
す。)
 この9月30日付けで朝日新聞は、別刷りで「漱石の世界」という8ページの特集を組ん
でいますが、これは漱石の没後百年にあわせたものとなります。漱石朝日新聞社員と
して作品を発表したということにちなんでいることはいうまでもありません。
 この「漱石特集号」の目次をみますと、座談会は中野重治吉川幸次郎中野好夫
三人、これに続いて河野与一、湯川秀樹神田喜一郎勝本清一郎河盛好蔵、木下順
二という面々が寄稿しています。場違いな感じの若手で大江健三郎の名前がありまし
た。
 昨日に書影を掲げた「荷風」特集の62年12月号の裏表紙の広告は、岩波の自社のもの
でしたが、65年12月号の裏表紙広告は、以下のようにかわっていました。

 「図書」裏表紙広告といえば、やはり「サントリー美術館」でしょう。この頃から
ずーっとここは「サントリー美術館」の指定席でありましたが、数年前(もっと前か)
から、サントリー美術館は姿を消しました。当方にとっては、山下達郎さんの長寿番
組「サンデーソングブック」の冠スポンサーから「ジャックス」が外されたのと同じ
ように淋しいことでした。