朝日ジャーナル 82 3

 昨日に続いて「ブックガイド82」から話題をいただくのですが、「ペーパー
バックスの世界」と題されているわりには、「ブックリスト」は、ペーパーバック
を主体にとありますが、ペーパーブックだけに限定しているわけではありません。
 このブックガイドをつくるにあたっての、編集部のコメントは、次のものです。
「読書は、連歌に似ていると思う。一句一句が独立しつつ、全体がつながって渾然
たる連歌的世界を形成するように、あの一冊からこの一冊へと、一見脈絡のない
渉猟と没入とが、かけがえのない読書体験をつくりだす。
 だから私たちは、単純な部門別ガイドとはひと味違って、想像の翼をひろげ、
興味が興味を生んでいく”連歌的読書”の指標をめざした。」
 ブックリストに「都市空間の表層と深層」というのがありますが、これについて
の対談は、前田愛(同姓同名の方がたくさんいますが、もちろん国文学者)と
栗原彬(政治社会学)の二人です。このブックリストは、編集部が基本となる
ものをリストアップして、それをこの二人がチェックしたもののようです。
 このリストには、「都市を描く」というジャンルがありました。以下のような
本のならび方を、連歌的というのでしょうか。
 上海にて        堀田善衛    筑摩叢書
 上海          横光利一    河出版全集第三巻
 にごりえたけくらべ  樋口一葉    岩波文庫ほか
 U・S・A        ドス・パトス  岩波文庫
 いちご白書       J・クネン    角川文庫
 じゃりン子チエ     はるき悦巳   双葉社
 寺島町奇談       滝田ゆう    青林堂
 小説昭和十一年     小沢信男    三省堂
 ナボコフの1ダース   ナボコフ    サンリオ文庫
 走る家族        黒井千次    集英社文庫
 杳子・妻隠       古井由吉    新潮文庫
 挟み撃ち        後藤明生    集英社文庫
 アレキサンドリア四重奏 ダレル     河出書房
 ユリシーズ       ジョイス    河出書房
 1984年       オーウェル   ハヤカワ文庫
 スローターハウス5   カートボネガット ハヤカワSF文庫
 舞姫 うたかたの記   森鴎外     岩波文庫
 東京の三十年      田山花袋    岩波文庫
 浅草紅団        川端康成    中公文庫
 マレー蘭印紀行     金子光晴    中公文庫
 太陽のない街      徳永 直    新潮文庫
 ぼくとう綺譚      永井荷風    岩波文庫
 日和下駄        永井荷風    岩波文庫
 金沢          吉田健一    河出書房
 ペスト         デフォー    中公文庫
 オリバー・ツイスト   ディケンズ   講談社文庫
 ペテルブルグ      ベールイ    講談社世界文学全集
 見えない都市      カルヴィーノ  河出書房
 時間割         ビュトール   中公文庫
 
 前田愛さんが「都市空間のなかの文学」という本を刊行したのが、82年と
ありますが。このリストは、前田さんの手がはいっていると思いたいもの
です。