10月10日は、お天気の特異日でありまして東京は晴天の確率が極めて高いというのが
本日が「体育の日」となった、そもそもであります。
1964年10月10日に東京でオリンピックが開催されたのですが、それから50年ほどたっ
て本日はただの日となってしまいしまいました。50年もたつと世の中かわることです。
良く変わればよろしいのでありますが、必ずしもそうとばかりはいかないようであり
ます。
それはさて、本日に入手したのは古書店からでありまして、最近入手の古書としては、
すこし高いものでありました。(とはいっても、ふだんは105円とか500円のものが多い
のですから、それとくらべての話です。)
「日本の古本屋」で検索したら安い物は、当方が入手したものの半値ほどでありました
が、当方が入手したのは、かなりの美本でありまして、刊行が1939(昭和14)年、いま
から70年以上も前のものとは思えないものです。
これ以降、戦時体制下にあって出版はたいへんになり、戦後は紙不足で出版すら難し
いことになりますから、本らしい本がだせた最後のほうかもしれません。
本日の本は、次のものであります。
- 作者: 林達夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1939/07/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (1件) を見る
思ってもみませんでした。てっきり、これの中公文庫版があがってくると思っていま
した。
「思想の運命」からは、岩波文庫「林達夫評論集」にも何編かとられていますが、ここ
では、あまり目にする機会のない「私の家」という文章を紹介です。
林達夫さんは、鵠沼におすまいで、そのお宅は見事に洋風な家であったとのことですが、
当方はその実物を見たことはありませんが、「自己を語ることの少なかった」林達夫
さんが、自分の家について語った珍しいものです。
「わが国古農家などは黄嘴の建築技師などに言わせると凡そ不合理的住宅の標本みたい
なものだが、その合理的構成や逞しい堅牢性にかけては近頃のモダーン住宅の比では
ないといわねばならぬ。しかし何より私たちがそれに牽かれるのは、そのもっている
ヒューマニズム的雰囲気である。古い農家の煤けた巨大な柱や梁が、恰も温かい血の
通っている頼もしい伴侶のようにその親しみある安住感で我々をつつみ込むような経験
を味わなかったものがあるだろうか。ただ憾むらくは、それは我々現代人の生活条件に
応じた間取りや施設を持っていないだけのことである。」
というのが、林達夫さんによる「私の家」の前半でありまして、後半はこうした古い
農家の材をつかって家を建てるということになります。