「父の娘」として10

 矢川澄子さんがなくなってから刊行された本の編集者は、みなさん矢川さんとは
長いおつきあいがあったようです。そのなかで一番の新参は「ユリイカ」の郡さんで
ありました。矢川さんが亡くなってから刊行の本は、こうした編集者の共同作業に
よっていたようです。
 「ユリイカ」の郡淳一郎さんは、臨時増刊号「不滅の少女」に、次のような文章を
寄せています。
「 矢川さんに新聞雑誌に発表されたままのお書きものを単行本に編集させてほしいと
お願いし、やはり同じ希望をお持ちだった筑摩書房の中川美智子さんにお引き合わせ
いただいたのは、2001年12月7日、新宿中村屋地下トマ・シューズでのこと
だった。
 この時点で矢川さんは、校正中の『アナイス・ニンの少女時代』の次のお仕事と
して、すくなくとも三つのプランをお持ちだった。
一つは、連載『わたしの一世紀』を一回十年分で5回連載し、残り50年分は書き
下すこととある。そして『静かな週末』『兎とよばれた女』『おにいちゃん』などの
編集者である筑摩書房の中川美智子さん、『わたしのメルヘン散歩』『反少女の灰皿』
『父の娘たち』などの編集者である新潮社の塙陽子さんと、一冊ずつ作ることだった。
(矢川さんの生前のプランに基づいて塙さんが編んだ短編小説集『受胎告知』は
11月、新潮社より刊行予定。)
 ここに再録した十二編は、中川さんのご了解のもと筑摩書房での単行本の目次案を
作成するために、そしてできれば三冊目、四冊目の単行本を編むためにとお願いして、
2002年2月12日、黒姫のご自宅で矢川さんからお預かりしたお仕事のスクラップ
11冊のなかから選んだ。」

いづくへか

いづくへか

2003年5月刊「いづくへか」は筑摩書房ですから、中川美智子さんの担当になり
ますが、これの編集付記には、つぎのようにあります。
「 本書は、昨年5月29日に自死した矢川澄子の既刊単行本及び『矢川澄子集成』
ユリイカ臨時増刊号 矢川澄子・不滅の少女』に未収録のエッセイを対象として、
彼女の71年にわたる試行を跡づけることを念頭して編集したものである。・・
 編集には中川美智子と郡淳一郎があたった。」
 朝日新聞に三回にわけて掲載された「いつもそばに本が」が、どうして
「いづくへか」に収録されていないのかと思いましたら、これは「ユリイカ」に
収録されているので、重複をさけたということがわかります。しかし、この文章は
「いづくへか」で読みたく思いましたですね。