「本の雑誌」12月号を見ていましたら、最近にでた小説作品の紹介のところ
で手がとまりました。ここで取り上げられている本が図書館に入っていたら、借り
るのにと思ったのですが、図書館の蔵書検索をしてみたら、ヒットせずでありま
す。入らないのかな、これは。
ということで、紹介しているのは杉江由次でありまして、「新刊めったくたガイ
ド」にありました。
「2022年2月5日、西村賢太氏がこの世を去って、三つのロスに襲われた。
ひとつは西村賢太ロス。これは遺された著書を読んで癒やすしかない。
ふたつめは、日乗(日記)ロス。赤裸々でありながら芸のある日記はそうそう読
めるものでなく悶絶していたが、車谷長吉の『癲狂院日乗』(新書館)が出て、
溜飲を下げた。
さて三つ目のロスである。それは私小説ロスだ。西村賢太氏が『最後の私小
説作家』と呼ばれたように、現代においてそうそう私小説作家が現れることは
なく、このロスはもはや埋まらないものと考えていた。そんなところにただならぬ
書名と装丁に惹かれて手にした西村亨『孤独への道は愛で敷きつめられてい
る』を読んで、ロスがうまるどころか小山ができるほど堪能したのである。」
当方は、私小説は文学ではないというような吹き込まれかたをしておりまし
たので、ひたすら遠ざけていたのですね。それでいて、若い頃に上林暁の小説を
読んで好きになったのですから、首尾一貫しないことです。
当方の若い頃に、西村賢太さんの小説と出会っていましたら、まずは手にする
ことがなかったでしょうね。西村賢太さんが芥川賞を受けたのは、当方が還暦を
迎えた年のことでありまして、すこしは西村さんの世界を受け入れるだけの余裕
ができていたようです。
それと比べると、車谷長吉さんのほうが読むのは厳しいですよね。
作家デビューして最初の頃のは、出ると買っていたのですが、精神的に不安定な
状態にあるなかで書かれたものは、ちょっと付き合いきれないなと思って、遠ざけ
ることになりました。
車谷さんが亡くなって来年は、早くも10年になりですが、それを前に「癲狂院
日乗」が刊行になり、これを怖いもの見たさで手にしてみたいのでありますが、
いまだにその機会に恵まれません。こうした毒のある本は、あまり図書館では
入れたがらないのかな。
杉江さんが絶賛するところの西村亨さんは、太宰賞を受けられた方であるとか、
図書館にないのであれば、どこかで立ち見をしてみましょう。