川端賞好ましいといいながら

 川端賞は、当方好みの作家が多く受賞しているので、好ましいと記したので

ありますが、受賞作品のリストをつらつらながめてみますと、受賞作をリアル

タイムで読んでいたのは、辻原登さんの「枯葉の中の青い炎」(2005年受賞)

が最後であることがわかりました。

枯葉の中の青い炎

枯葉の中の青い炎

 

  しかもでありますが、それからあとの受賞作品は、ほとんど読んでいないの

でありますね。まったくいいかげんなことであります。

 この時代は、小説自体が読まれなくなっているといわれますが、なかでも

短編集については極めてきびしい状況にあるようです。「本の雑誌」7月号に

は、どちらかというとエンタテインメント系の短編についてですが、次のように

いわれています。(発言者は、新潮社の編集者さんです。)

「ちゃんとした短編集なら連作じゃなくても評価されるし売れるんだっていう

思いはあるんですが、いい短編集も知ってもらわないと読まれない。その前に

刊行されない。連作じゃない短編集は出版事情が厳しいこのご時世、厳しい

ですよね。

 日本のマーケットは圧倒的に長編指向なんですね。小説誌は長編を連載し

てもらう役割が非常に大きくなっている。長編の連載は途中から読んだ人が

わからないから、小説誌は読者も減る一方なんです。

 それは辛いので、単発で楽しめる短編を載せて、その号ごとの購買でもある

程度楽しめるものを作りたい。」

 新潮社でエンタメ系というのですから、これは小説新潮の話であるようです

が、どこの小説誌でも共通のことでありましょう。

 「本の雑誌」の特集では、川端賞の受賞作56作品を全読破するという企画

がありますが、こちらはそれは難しいので、川端賞を受賞した作家さんの短編

をすこし読んでみることにします。

 名作短編集といえば、講談社が「群像」に掲載のなかから精選した小説を

一冊にまとめた記念号がありました。これから鶴岡真弓さんのものを読むことに

します。

 そういえば、この「群像名作選」に収録の佐多稲子さんの「水」を、佐久間

文子さんが「本の雑誌」7月号で、「好きな短編小説と聞かれて、すぐに思い

浮かんだ」作品と記しています。もちろん、この作品は1962年ですから、

川端賞が生まれる前のものですが、佐多さんは第三回に受賞していました。