この週末の読書は

 この週末は図書館から借りてきた森まゆみさんの「聖子」を読むのでありま

した。予定ではかなり読んでいるはずなのですが、まだ前半のところをチョロ

チョロです。その分、楽しみはまだまだ先にあるということで、ありがたいこ

とです。

 「聖子」さんといっても、オリンピックなどにはまったく関係がないはずで

ありまして、アナキストの画家の娘さんで、多くの文化人が集ったバー「風紋」

のママさんという方を描いたものです。

 当方は新宿の夜の町には明るくなしでありまして、まして文化人などが集まる

店には恐れ多くて近づけないのでありました。「風紋」という店は、ほとんど

頭に入っていなくて、そういう意味では今回の本はありがたいことです。

 どういうわけか、父親であるアナキストの画家の名前は目にしたことがあった

のですが、それは父である画家 林倭衛さんが描いた「大杉栄」の肖像が有名で

あるからでありましょう。

 父がアナキストの画家で、大杉栄辻潤と交流があったというと、それは相当

に大変な子ども時代ではなかったかなと思うのですが、いまだそこまではたどり

ついておりません。

 林倭衛さんはなんとか工面してフランスへと行き、絵の勉強をするのですが、

そのときの同船者について、森さんの書くところです。

「大正10(1921)年7月31日、横浜からクライスト号に乗った26歳の林倭衛は

9月7日、マルセイユに着いた。坂本繁二郎小出楢重、硲伊之助、仏文学者の

小松清と同船である。」

 同船者には、「政治家とか経済学者みたいなケチ臭い奴」が乗っていたと小出

楢重は妻に手紙を送っているのですが、小出は林さんと親しかったようで、森

さんは小出の随筆からも引用をしていました。

 それにしても、坂本繁二郎小出楢重と硲伊之助(岩波文庫に入っている

ゴッホの手紙」の翻訳者ですね)が乗っていたとは、なかなかすごい組み合わ

せです。

 なにもすることのない船で、一ヶ月を超えて一緒するのですから、お互いの

性格などもわかりあえるでしょうから、この合宿のような生活は、その後におい

ても影響をあたえたことでありましょう。

 やっとパリで落ち着いたというところに現れたのは大杉栄でありまして、ここ

からは本日、これからの読書となりです。