ため息が聞こえてきそう

 この時期は相撲本場所でありまして、ひいきの力士の結果に一喜一憂している

のでありますが、本日は年に二度の芥川、直木賞の発表日でありまして、候補に

あがっていた作家さん、編集者、版元、それに印刷会社さんなどは大きな期待を

込めて結果がでるのを待っていたことでしょう。

 候補がみな受賞するわけではありませんので、外れたグループは大きなため息

をついたことはずで、それがきこえてきそうなことです。

 あちこちでたぶんどの作品が受賞するかと予想などをしているのでしょうが、

当方が目にした新聞の予想(記者さん四人で選んだもの)で、一番有力というこ

とで二重丸が多くついていた作品は、芥川も直木もどちらも外れでありました。

 ほんとうはどちらも若手作家対象の文学賞であるのですから、問題はこのあと

であるのですが、それにしても、これを受けると受けないのでは、その後に違い

がでるのでしょうね。

 先日に入手した柚木麻子さんの「私にふさわしいホテル」」という小説を読ん

でいましたら、次のようなくだりがありです。

「下積み時代は、とにかく小説家デビューさえできればそれでいいと思っていた。

単行本デビュー前はたった一冊でいいから自分の存在証明である作品をこの世に

出せれば本望と思っていたし、処女作を出した後は重版さえかかるなら後はもう

何もいらない、と歯をくいしばって頑張った。そして、いざ本がちょっぴりと

動きだすと、今度は玄人筋からの敬意や評価が欲しくてたまらない。」

 柚木さんは、この「私にふさわしいホテル」を発表の翌年から、ほぼ毎年の

ように直木賞の候補になること5回なのですが、いまだ受けることができてい

なくて、最新作「らんたん」は発表されたタイミングからすると、今回にノミ

ネートされる作品であったようにも思えるのですが、候補にはなしです。

 そのうちに、ここまで完成された作家なので、いまさら直木賞ではないなんて

ことになるのでしょうかね。

 まあ佐藤正午さんのようなこともありますので、柚木さんもまだまだこれから

ですね。