五十代も後半になったころから、まるでサブカルチュアの世界にはうとくなり
ましたです。年をとってきて、頭が固くなってきたことと関係がありでしょうね。
それと田舎暮らしのために、情報に触れることも少なかったからな。
先日に入手した川勝正幸さんの「21世紀のポップ中毒者」を、トイレで読みな
がら、これで取り上げられている音楽も映画も人物もほとんど知らないのであり
ます。当時は無名であったが、今はずいぶんと有名になっているという人もいま
すが、今も活動をしているのかも知れないが、変わらずにサブカル路線を走っ
ているという人もいるのでしょう。
そんなサブカル者に川勝正幸さんがインタビューしたものが、この文庫本に
収録されています。
インタビューを受けているのは、1969年に札幌(?)で生まれた吉野寿さん
というミュージシャン。この名前を見て、あああのグループの人ねとわかれば、
相当のサブカル通でありますね。「イースタンユース」というバンドのメンバー
だそうです。
この人に、川勝さんは音楽、映像のことを聞いて、最後に下井草さんが
「日本の作家で、繰り返し読むのは誰になりますか。」と尋ねます。
吉野さんは、「ヒーロー的に好きなのは、お恥ずかしいんですけど坂口安吾
です。」と答えます。お恥ずかしいというのが、なかなかわかっているかです。
そのあとに驚きの作家の名前があがってきます。
下井草さんに「私小説作家の木山捷平もお好きなんですよね。」とふられた
のに対して、次のように返します。
「最高っすね。どれを読んでも面白い。外れがない。表向き、『僕には主張した
いことはないです」ととぼけていながら、グッと奥には黒光りする毒がある。」
木山捷平とは渋いことでありまして、このように言っているのがあたって
いるのかどうかですが、さらにこのあと、梅崎春生と島尾敏雄の作品について
話題とするのですから、これはなかなかすごい人でありますね。
いまさらですが、吉野寿さんの名前を覚えておくことにしましょう。