80歳を超えた現役の文筆家のものを読むというのは、当方の行く末を
教えられることになりです。90歳を過ぎても連載をもって一線で活躍する
小沢信男さんのような方がいれば、80代半ばで倒れる方もいることで。
当方の場合は無事に80代にのっかることができるかどうかもわからない
のでありますが、本日はある日突然倒れた方の本を確保です。
この本がでたことは新聞広告で見ていたのですが、先月の関西旅行の
時に立ち寄った書店でも見出すことができずでした。本日にたちよった
行きつけの本屋の目立たない棚に、ひっそりとささっていました。
小林信彦さんの週刊文春連載コラムが中断したときには、相当に体調
が悪いのではといわれて、連載もこれまでかと思ってしまったものです。
なんとかすこし回復したところで、連載は復活したのですが、その内容はこれ
までのものとは違って、闘病記となりました。
ほぼ八ヶ月分の連載をまとめた「生還」ですが、書き出しの一行は次の
ようになりです。
「約一週間、生きるか死ぬかというところにいたらしい。きわめて危険な場所
と考えるべきだろう。
八十四年にわたる私の人生で、もっとも死に近づいていた期間ともいえる。
かっての私は、そういう期間はもっとも苦しい、痛いものと考えていた。」
当方の95歳になる母は、83歳の時に脳出血で倒れて、半年を超える入院と
なりましたが、半身にマヒは残るものの、なんとか失語にもならずに車いすでの
生活を続けています。母の回復過程を近くで見ていましたら、まさしく生還とい
うにふさわしいものでありました。
母は右手がきかなくなりましたので、文字を書くのも、食事をするのもすべて
左手でやることになりですが、小林信彦さんは、話したり書いたりするのに不自
由はないのでしょうか。