本日の新聞広告に文春文庫新刊ラインナップがでていました。どんなものが
あるのかなと見ていましたら、小林信彦さんのものがありました。
そういえば、「日本橋の生まれて」の巻末「本音を申せば」シリーズリストを
よくよく見ましたら、2022年2月文庫化の文字がありましたです。
そうかシリーズの一冊を飛ばして、こちらが先に文庫となったのでありますか。
「生還」は小林信彦さんが84歳の時に脳梗塞を起こして倒れ、それから復帰
するにいたる経過を記したドキュメントとなります。
倒れてからはしばらく週刊文春のコラムをお休みすることになったのですが、
戻ってくるのは相当に難しいであろうと、当方などは思ったものであります。
それが奇跡的に復活して、その後何年か健筆を振るって、ファンを喜ばせてくれ
ました。
小林信彦さんの本の装丁といいますと、平野甲賀さんでありまして、平野さん
はすでに鬼籍にはいってしまっているのですが、今回の「日本橋に生まれて」は
平野さんの流儀を受け継いだスタッフさんとの共作でありました。
そう思って「日本橋に生まれて」の目次をながめましたら、「装幀家の死と
夢の途中」というのが目に入りました。このタイミングで、小林さんが装幀家と
いいましたら、これは平野甲賀さんしかいないではないですか。
そんなわけで、本日はこの文章を読んでみることにです。
「平野さんの文字はなんというか、独特の、(手工芸的と私は思う)形容しよう
もないもので、私が五十年弱頑張ってこられたのはこのおかげもあると固く信じ
ている。・・・平野氏がみずからの文字を信じているように、私もまた<平野文
字>に深く依存している。よかれ悪しかれ、今日まで私はそう思ってきたし、
明日からそれが不可能になったとして、どうしたらよいかわからない。」
ひどくつらい文章でありますね。小林信彦さんの代表作である「日本の喜劇人」
は晶文社でありまして、その装丁はもちろん平野甲賀さん、そして昨年にでまし
た「決定版 日本の喜劇人」もまた平野さんのものでした。
小林さんの本というと、平野甲賀さんの装丁が頭に浮かびますものね。