となり町へ

 本日はお昼時間に食事をしながらクラス会打ち合わせということで、

となり町までいってきました。いつもでありましたら車でいくのですが、本日は

普通列車を乗り継いでいくこととしました。近くの小さな駅は車をとめる所が

ありますので、そこに車をおいて、ディーゼルカーと電車を利用することになり

です。列車を使いますと、車中で本を開くことができるのが、よろしです。

 本日の車中のともは、谷崎新書版全集でありまして、そのなかから「東京を

おもふ」というエッセイを読むこととなりです。次のようなくだりが目に入りまし

た。

「今でも地方の素封家などが、故郷で失敗して東京へ流れて来、中野や渋谷

や阿佐ヶ谷あたりのガタピシした新建ちの借家に世帯を持ってゐるのを見る

と、とても気の毒になると云ふのは、凡そ東京の場末の新開地ぐらゐ索落た

る感じのする所はないのである。」

 谷崎潤一郎が昭和9年「中央公論」に発表した文章であります。今から

85年くらい前でありますが、日本橋で育った谷崎からすれば、そういうことに

なるのでありますね。

 上に引用したのに続いては、この「場末の新開地の新建ちの借家」の住み

ごごちの悪さがいわれています。

「これは私の持説であるが、あの辺の冬は北海道の冬よりも寒からう。北国は

温度が低くてもそれを凌ぎ得るやうな設備があり、雪が積もれば却って家の

中は暖かいものだし、雪国らしい情趣も生ずる。然るに東京の場末と来ては、

雪が積らないで、空ツ風が吹き募る。・・東京の借家は概して貧弱で建つけが

悪いから、隙間洩る風の寒いことと言ったらない。」

 85年も前の北海道と比べられ、場末場末とけなされているのは、当時の

新興住宅地ですね。いまではそのあたりに住むのも大変となっているのに。

 列車を降りたら、駅の近くには本屋さんがありまして、それに立ち寄るのも

楽しです。本日は行きと帰りに、それぞれ別の本屋をのぞきました。

何か思いがけない本はないかなと思って棚をみていたのですが、これは

ほぼ空振りで、買い逃していた文庫本を一冊購入しました。

音楽放浪記 世界之巻 (ちくま文庫)

 15時過ぎに自宅に戻りましたら、「みすず」読書アンケート特集号が届いて

いました。そろそろ届く頃かなと思っていましたが、これはうれしい。早速なか

をチェックですが、いいぞ、いいぞ。