本日の朝日新聞土曜別刷の「みちのものがたり」を「『パノラマ島』異聞への道」
を見ていましたら、次のくだりが眼につきました。
文章は、江戸川乱歩の「パノラマ島綺譚」の舞台を詮索するものでありますが、
そこにありました。
「エドガー・アラン・ポーの『アルンハイムの地所』に影響された谷崎潤一郎が、人
工の自然を主題にした『金色の死』を出したのが1914年。乱歩はこれらに刺激を受け、
のちに『パノラマ島』を書くのです。」
文章のなかで、記者にこのように語っているのは、作家伊藤裕作さんです。この方
は、「パノラマ島綺譚」の舞台となった「M県S郡沖」というのは、乱歩が二十歳まで
住んでた三重県鳥羽市周辺ということを主張し、検証しているとのことです。
そして当方が、このくだりを見て反応したのは、谷崎の「金色の死」があがってい
たからです。
谷崎にこのような作品があるということは、最近まで知りませんでした。この小説
のことをあげていたのは、丸谷才一さんで、その文章は講談社文芸文庫の推薦文で
あったのですが、それをどこで見たのであったかです。その小文をさがして、全集の
第12巻、そして「別れの挨拶」とチェックしましたが、そこにはなく、あったのは、
「星のあひびき」でありまして、この文章のタイトルが「民族の本音」でありまし
た。
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前のことなのに、すっかり忘れていて、なさけないことですが、再度の引用です。
( http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20160806 )
もとは、2008年の講談社文庫・新聞広告に寄せたものです。その文章から後半を
引用です。
「文庫の横綱は岩波で、以下いろいろと推賞すべきものは多いが、逸してならない
のは講談社文芸文庫、その特質は近代日本文学の読むべきものをよりぬいてゐるこ
と。
そして近代日本文学は、西洋文学の多彩と充実は持ち合せず、日本古典文学の洗練
と高雅は欠くものの、近代と日本という身近な条件二つが重なるせいか、妙に切実で
胸を打つ。危機に際会したときの民族の本音が詰まってゐる。たとへば『白秋青春詩
歌集』、谷崎潤一郎『金色の死」、徳田秋声『あらくれ』、古井由吉『山躁賦』など、
みなわたしの枕頭の書、車中の好伴侶である。」
これを見たとき初めて「金色の死」という作品があることを知りました。
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