楽しく読了

 金井美恵子さんの「お勝手太平記」を読んでおりました。このタイトルからし
谷崎潤一郎さんへのオマージュを感じることでありますが、中身のほうは「台所太平
記」を思わせるところはありません。
 あちこちに散らされている蘊蓄や悪口を楽しんでおりました。主人公からの手紙を
あてられている人には、金井さんの目白四部作の登場人物などもいまして、そのこと
を知っている読者さんは、複層的に読む事ができる仕掛けとなっています。
もちろん、その登場人物を通じて、作者自らも他人のように姿を現したりします。
主人公から佐藤絵真さんへとあてられた手紙冒頭からの引用です。
「お手紙ありがとございました。
 それに『目白雑録』の文庫本もお送りいただいて、本当に嬉しかったわ!この人の
小説とエッセイは、私、どちらかと言うと好きなんですけど、この本のことは、うか
つにも知りませんでした。
 でも絵真さんのお婿さんは、さすが、ですね。この本の中に私たちのことが出てく
るって、発見してくださったんですもの。」
 この主人公であるアキコさんも「目白四部作」の登場人物であるのかな。
という具合に、一度読んだけどもすっかり忘れてしまっている過去の作品を手にして
みたくなることです。
 これに続いては「カストロの尻」を読むことになるのかなと思って、その前にする
ことはです。これも「お勝手太平記」のくだりから引用です。
「母たちの世代もそうでしたし、私たちもなんですけれど、お菓子やケーキやお茶や
果物の有名店のきれいな包装紙って、箱のかたちに合わせた畳ジワをアイロンできれ
いにのばして、円筒状に丸めて取っておいて、教科書のカバーにしたり」
 おばさんにならってではありますが、当方も「有名店のきれいな包装紙」で本に
バーをするのでありました。
ちょうど百貨店の包装紙に赤のものがありましたので、屋上屋のきらいはありますが、
カストロの尻」に、この紙でカバーをしました。

 上に掲げた写真の左に置かれたものは「お勝手太平記」、右は「カストロの尻」と
なりです。

お勝手太平記

お勝手太平記

カストロの尻

カストロの尻

 「カストロの尻」冒頭の作品は、冒頭のページにいきなり谷崎潤一郎後藤明生
名前がありです。吉野つながりでありましょうか。これは楽しみなことで。