西游日録 4

 本日も石川淳さんの「西游日録」からです。
 50年前の本日、石川淳さんはなにを話題としているかであります。
「朝8時ホテルを発して、われわれ車にてドレスデンにむかふ。Y君同道。街道を行く
に、入れちがへに市中にむかふ車がぽつぽつ見えて、どれにも黒い服を着たひとが乗っ
てゐる。さきの二十一日に、すなわちわれわれ到着の日に、民主ドイツ首相の某氏逝去
けふその国葬が市中におこなわれる。故人は晩年に糟糠の古女房を捨てて若い女秘書と
結婚したと聞く。あっぱれの御仁のやうである。ただし、このスキャンダルのゆゑを
もって、婦人団体の反感を買ったとやら。オカミサンの感情は共産圏でもかはりがない
ものか。あはれな首相夫人は村八分をくってゐたといふ。」
 検索をしてみましたら、この方は「オットー・グローテヴォール(Otto Grotewohl、
1894年3月11日 - 1964年9月21日)はドイツの政治家。第二次世界大戦前にドイツ社
民主党の要職を務め、戦後はドイツ民主共和国東ドイツ)の初代首相
(Ministerpräsident)となった。」という方であります。
 この方のことを検索してみるというのも、石川淳さんが書き残してくれたおかげで
す。