本日の話題 5

 「本の雑誌」2月号から津野海太郎さんの連載を話題としています。
 岩田宏さんの「渡り歩き」から小笠原豊樹さんの「マヤコフスキー事件」へと
津野さんの話は進んでいきます。こちらはちょっとこの展開についていけないので
ありますが、その終わり近くになって、ふいにこういうくだりが登場します。
「多少の年齢差はあれ、おれはやはり小笠原さんと同じ時代を生き、おなじ文化を
分かちもつ人間だったんだな、とあらためて理解した。そのついでに、昨年末に刊行
した『花森安治伝』を書きすすめるなかで、必要があって読んだ松田道雄の『幸運な
医者』という本のこんな一節を思いだした。」
 津野さんの「花森安治伝」は購入して、いまだ未読でありますが、このくだりを眼
にしてあわてて、「花森伝」を取り出してきて引用文献のページを開いてみました。
ここには、松田道雄さんの著作があがっているのですが、「幸運な医者」という本は
あがっていませんでした。必要があってというのは、どういうことなのでしょう。
松田道雄は花森より三歳上の1908(明治41)年生まれ。・・・日常の暮らしを大切
にして国家や政党の力に屈することをよしとしない自由思想家でもあり、花森安治
もっとも心を許した人物のひとりだったという。」(「花森安治伝」276ページから)
 松田道雄さんが「暮らしの手帖」に連載を持っていたことは、まったく記憶に残っ
ていませんでした。
 松田道雄さんを訪ねて京都へきて、松田さんとの話し合いのあとホテルで倒れて
松田さんの手配で医師を確保してホテルで治療を受けることになったということも
この「花森伝」で知りました。(このことは、他の方の著作にもでてくるようです
が。)
 「必要があって読んだ」というのは、ある意味、花森安治の盟友でもあった松田
道雄さんの著作を手当たり次第に読んで見て、そのなかから花森に関わりのあると
ころをチェックしたのだということがわかります。引用にいたった文献は3編ほどで
ありますが、参考にしたのは、どのくらいあるものやらです。
 たしかに、「幸運な医者」のページをめくってみても、花森安治さんの名前は
見あたらないようですので、これからは引用するところはなかったでありましょう。