本日の話題 4

 若いときの読書というのは、頭にがつんとくるようなものを求めてしまうのであり
ますが、読書にはじわっと効いてくるようなものもあるということを、その昔に対談
で見たことがありました。たぶん、そのような発言していたのは金井美恵子さんで、
対談がのっていたのは「話の特集」ではないかと思うのですが、なにせはっきりと
しません。
 フィーバーして完全にいかれてしまうのが若い頃の読書の主流であるかもしれま
せんが、当方は若い時期になんとなく、そういう読書を遠ざけていたように思います。
それが当方の読書傾向を若年寄のようなものとして、若いのに趣味が渋いといわれて
きたのでありますが、40代くらいになって、やっと年齢が追いついてきたというところ
でしょうか。
 そうなると、60代からの読書はどうなるのかというのが、「本の雑誌」の津野海太郎
さんの「老人にしかできない読書」であります。これの1月号に掲載の文章から引用し
ます。
「もうしばらくすると私は消えてなくなる。そんなぎりぎりのところで、たいていは
偶然のきっかけで過去の経験を新しい目で見直さざるをえなくなる。ちょっとしんどい。
でもその一方で、自分の経験をもうひとつ複雑なしかたで深めることができた、よし
なんとか間にあったぞ、という苦いよろこびもある。年をとると、そんなけっこうしば
しばあるのですよ。」
 当方は、まだまだこの域には達していないことであります。津野さんにいわせると
当方の現在は「五十代と七十代のあいだでなんの確信もなく揺れているやわな吊り橋み
たいなものなのだ。」となります。「やわな吊り橋」か。