「釜ヶ崎語彙集」の編著者 寺島珠雄さんについてであります。
ネットを検索すればすぐに情報を得ることができるように思われたりしていますが、
寺島珠雄さんに関してはどうでありましょう。もうちょっと、その人となりについての
情報があってもいいのにと思います。
情報の少なさは、寺島さんの立ち位置とも関係しているのでありますでしょう。
それだけに、小沢信男さんが「みすず」に連載したものを一冊とした「通り過ぎた
人々」での取り上げは貴重なものとなるのでありました。
小沢信男さんが描く寺島珠雄さんの肖像からのひとふで書きの部分を引用です。
「年少時より生え抜きのアナキスト詩人寺島珠雄は、裏長屋の剣客のような起居の人
だった。」
「裏長屋の剣客のような起居」ですよ。これからどういうことを想像しますでしょうね。
「裏長屋」に住まいしているということは、好んで住まいしているとすれば、よほど
斜に構えているのでありましょうし、そうでないとすれば世に容れられてなく、懐具合
がよろしくないのでありましょう。
「剣客」という言葉からは、時代小説の主人公を連想します。「剣客商売」という作品
がありますが、剣客といえば、この作品の主人公をイメージするのがわかりやすいで
しょうか。
「剣客商売」の主人公についてウィキペディアを見てみますと、次のようにあります。
「無外流の達人である老剣客。老いても盛んで小粋な爺さん。人脈もきわめて広く、
身分を問わず多くの人に深く敬愛信頼されている。好奇心が強く人間そのものの達人で
あり、悪には容赦せず、弱く苦しむ者には助けを惜しまない。芸術・美食にも関心が
強い。」
こうして引用してみますと、寺島珠雄さんのことを剣客ということばで描いた凄さを
感じることです。