小沢信男著作 28

 小沢信男さんの著作案内をしていますが、「若きマチュウの悩み」についで紹介
しますのは、次のものです。
 「東京の人に送る恋文」晶文社刊 75年9月25日 1300円

東京の人に送る恋文

東京の人に送る恋文

 この本についての紹介文を、晶文社図書目録から引用してみます。
「東京は私の故郷です。銀座の裏通りに生まれ、『少年倶楽部』を読んで育ちました。
昭和初年の銀座の街角から、焼野原の神田駅周辺、上野アメヤ横丁、新宿御苑、浅草
ほおづき市、そしてオリンピックの東京まで、激動する東京の四季と、そこに生きた
人々の青春をいきいきと再現する新東京読本」 
 この紹介文を読みますと、これは小沢さんの東京ものの一冊目という感じを受けます
が、当方には幻の作品となっていた「わが忘れなば」が再収録され、読むことができる
ようになったぞという思いが強く、すぐに購入したはずであります。
 今頃になって、そんなことを感じても遅いのでありますが、小沢さんの「わが忘れな
ば」を読みたいとおもっていた、読者をこの作品でつり上げて、小沢さんの「東京物」
へと導くという、この本はなかなか巧妙な仕掛け(編集)であります。気になる編集は
もちろん津野海太郎さんでありまして、装丁は平野甲賀さんです。
 小沢信男さんは、「若きマチュウの悩み」(73年9月)と「東京の人に送る恋文」
(75年9月)の二作でメジャーな存在になる人と、当方は強く思ったのですが、なにせ
ご本人にそのような気持ちがまったくないのですから、新日本文学の編集長などを
つとめたりして、本があまりでないことになってしまいました。